スコルコボでは、特に近代化に貢献する5つのクラスターにおいて、ベンチャーの育成を目指している。エネルギー(Energy)、原子力(Nuclear)、情報技術(Infomation Technology)、通信・宇宙(Space)、医療(Biomed)――の5つだ。これはスコルコボ法にもセンターの事業目的として明示されている(第10条8項)。そこでは「方針に従った研究、開発及びそれらの成果の商用化を発展させることを目的」とするとされている。

メドベージェフが示した5つのベクトル

 これらのクラスターは、メドベージェフ大統領(当時)の施政方針に基づくもので、2009年9月10日に公表されたメドベージェフ大統領(当時)の論文『ロシアよ、進め!』で触れられている。そこでは、資源依存や汚職、生産性の低さ、他者依存の蔓延などを克服して、経済的近代化を果たさなければならない、という流れで、経済的近代化のための5つのベクトルが示されている。以下にメドベージェフ大統領の論文の一部を引用する(引用元はこちら)。

 

 次の 10 年、ロシアは一次産品ではなく、知的資源、すなわち知価経済、知識創造、新技術やイノべーティブな製品輸出を繁栄の基盤とする国家になるべきだ。

 我が国の経済的近代化の5つのべクトルは以下のとおりである。

  • 我々は生産・輸送・エネルギー利用効率において最も進んだ国となる。国内及び国際市場で使用する新しい燃料を開発する。
  • 我々は我が国の核技術を維持し、質的に新たな水準に高める必要がある。
  • ロシアの専門家は情報技術を進歩させ、スーパーコンピューター等を活用しグローバルなデータネットワークの開発に強い影響力を行使しなくてはならない。
  • あらゆる種類の情報伝達のため、地上及び宇宙のインフラを開発する。我が国の衛星は全世界の観察を可能とし、総ての国の人々が通信、移動、研究及び農業・工業生産に従事することを助けることができるものとする。
  • ロシアはウィルス性、心臓血管系、神経系疾患及び癌治療のための医療器具、最新の診断機器及び薬品生産において先進的地位を占める。

 この方針に基づき、5つのクラスターが設立され、それぞれの領域で研究開発やその事業化が推進されているわけだ。

スコルコボの研究開発棟からの風景。12月のモスクワは寒々としているがまだ雪は少ない方だという
スコルコボの研究開発棟からの風景。12月のモスクワは寒々としているがまだ雪は少ない方だという

 冒頭にも述べた通り、スコルコボは設立して5年が経つが、2015年現在では1188のスタートアップ、78のパートナー、40の認定されたファンドが活動しているという。

 次回は、スコルコボがどのようなスタートアップに対してどういった支援をしているのかを見ていこう。