東京ドーム85個分の広大な土地
まず、スコルコボの位置から確認していく。スコルコボはクレムリンがあるモスクワの中心地から、南西方向に20キロメートルほど離れた地域の名称である。そこに400ヘクタール、東京ドームで換算すれば約85.5個分の土地が確保されており、オフィスや研究所、大学、レジデンス等が建設されている。現時点で出来上がっているのは全体の一部だが、2020年までには260万平方メートルの広さのビルが建てられ、3万1000人が居住できる空間になる予定だという。
位置関係を東京で例えてみる。東京駅から南西に20キロメートル行くと、だいたい慶應義塾大学の日吉キャンパスあたりになる。ちなみに、日吉キャンパスは約33ヘクタールの面積なので、その約12倍の敷地が確保されていることになる。もちろん、比較できるのは位置関係だけであり、住宅や商店、オフィスが立ち並ぶ日吉と、見渡す限りの空き地からなるスコルコボでは、周辺の環境は全く違う。
日本からスコルコボに行こうとすると、まず直行便でモスクワのシュレメーチエヴォ国際空港に着くことになる。シュレメーチエヴォ空港からは、特急列車のアエロエクスプレスに35分乗り、モスクワ北西のベラルーシスカヤ駅まで行く。そこからスコルコボまでは、さらに地下鉄とバスを乗り継いで行くことになる。
少なくとも今のところ、ロシア語を解さない人にとって、その道のりは容易ではない。というのも、モスクワの交通案内はほとんどがキリル文字であり、日本語は当然だとしても、英語併記もほとんどない。つまり、駅名やバス停名が読めないのだ。アルファベットがわからないとこんなに不便なのかと、初めて日本に来た外国人の気持ちに思いを致すほどに困難だった。
駅員や店員もほぼ英語は話せないが、とても親切で身振り手振りでも熱心に教えてくれることが多い。しかし数年のうちには、ベラルーシスカヤ駅からスコルコボに行く直通の鉄道が建設されるということなので、移動もかなり楽になるだろう。
スコルコボの構成要素
スコルコボには、スタートアップとパートナー企業、投資家を結ぶテクノパークおよびビジネスセンターと、スコルテックがある。これらの施設は、2010年9月28日に当時大統領だったメドベージェフがサインしたロシアの連邦法第244号「イノベーションセンター『スコルコボ』について」(以下、スコルコボ法)に基づいて設立されたものだ。スコルコボ法では、センターの目的や運営に加え、スコルコボに参加した事業者へのさまざまな優遇措置が定義されている(こちらの資料を参照)。
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