(日経ビジネス2015年11月9日号より転載)

日本経済に巣くう根深い病となってきたデフレには4つの原因があった。賃金下落、産業競争力低迷、成長期待の低下、政策の誤りである。アベノミクスでもデフレ脱却には力不足だ。企業も変わらなければならない。

趨勢的な物価低迷からは抜け切れていない
●1990年台半ばからの消費者物価の推移
注:「生鮮食品を除く総合消費者物価指数(コアCPI)」と、「食料(除く酒類)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数(コアコアCPI)」を示した。共に2010年を100とした水準の推移を見た
出所:UBS証券の資料を基に本誌作成(写真=柚木 裕司)

 「この7年で200万円ほど年収が減って500万円になった」

 大手マンションデベロッパーの子会社で働く加藤良夫(仮名)は、無念さを押し殺すようにそうつぶやいた。50歳を過ぎたばかり。もともとSE(システムエンジニア)だった加藤は、1990年代初めに現在の会社へ転職し、人事システムの構築などを担当してきた。そんな加藤の身に“異変”が起きたのは2006年春のことだった。

 突然、営業部門に異動を命じられ、自社マンションの管理業務を担当させられた。仕事は親会社が手掛けたマンションの住民からの苦情処理。「入り口のオートロックが故障した。一晩、座っていてくれ」といった要求に振り回され、半年で体を壊した。

 復職した後も様々な部署をたらい回しにされた。「その中で人事評価は落とされ、給料も下がり続けた」(加藤)。給料が下がったのは加藤だけではなかった。社内の多くの40~50代管理職が降格となり、賃金を減らされた。親会社は市場の縮小などで業績が悪化。「何とか業績を取り繕おうと中高年の賃金を削ったのだろう」と加藤は憤る。