安倍が出生率回復を狙う理由はそこにある。育児支援で出生率を引き上げるとともに、女性の労働参加率を押し上げる。さらに介護離職ゼロの実現で働き盛りの退職を防ぐことで、少しでも労働力を増やそうというわけだ。

 ただし、これだけでは、「ここ20年の少子化対策の看板を掛け替えただけ」(中部圏社会経済研究所・経済分析チームリーダーの島澤諭)としか言いようがない。必要なのは、さらに踏み込んだ戦略と実行力だ。

 例えば、1993年に1.66だった出生率を2012年に2へ引き上げることに成功したフランスはこの間、思い切った政策を実行した。子供の数が増えるほど所得税が軽減される税制や、第3子以降は育児給付をより手厚くする制度などを整備。さらに個人宅で子供の保育を請け負う「保育ママ」の認定数を増やし、雇用する親を補助したり、育児休業制度も拡充したりした。

 大胆な対策には財源が必要になる。高齢者向け社会保障費が増え続ける日本にはそこが難題となってきた。しかし、高齢者対若年層という対立構造で財政問題を捉えるのも不毛である。互いに何を譲り、何を得るか。人口減から反転を目指すには、それは細くても目指すほかない道だ。

=文中敬称略