しかし、個人と企業への負担増はこれだけではない。これからむしろ将来にわたって続く。

 「従来と同様の緩やかな改革しか行わなければ、日本経済は2030年頃にはマイナス成長に陥る。消費税率は25%に引き上げなければならなくなり、国民の生活水準(1世帯当たり実質消費)は2割低下する」

 昨年1月、経済財政諮問会議に置かれた「選択する未来」委員会の初会合で、委員の一人で元日銀副総裁の岩田一政が提出した試算が世の中を驚かせた。

 同委員会は、人口減時代を見据えて取り組むべき政策を検討する場。従来は人口減が予想されても、そのマクロ的な影響までは分析されていなかったが、過去の不作為のツケの大きさがようやく明らかになってきた格好だ。

<b>安倍内閣は待機児童ゼロを目指すが…</b>(写真=アフロ)
安倍内閣は待機児童ゼロを目指すが…(写真=アフロ)

企業経営も人口減で変わる

 企業経営にも影響が出ている。

 「人口減で国内市場は縮小しており、既に顧客である自動車メーカーなどは海外市場に活路を求めている。当然、我々も海外での販売・生産を増やし続ける。そうなれば、本社の人材も、多様化せざるを得ない。総合職でも中国、韓国などの出身者を今、積極的に増やしている」。ブレーキ摩擦材大手、日清紡ホールディングスの社長、河田正也は今、人口減による国内市場の縮小を見据えて本社の作り直しへ思いを巡らせ始めている。

 市場が世界に広がり続ければ、「事業部門の“本社”は海外に移っていいかもしれないし、長期的に考えれば持ち株会社だって、日本にこだわる必要があるのか、と考えることもできる」と河田。人口減は、工場などの現場作業員の人手不足問題として理解されやすいが、国内市場の縮小を通じて日本企業の経営そのものに変化を迫ろうとしている。

 日本に今必要なのは、改めて人口減少への総合戦略を立て直し、それを実行できる力を発揮することだろう。

高齢者経費ばかりが増え続けた
●高齢者と子供関連給付費の推移
高齢者経費ばかりが増え続けた<br/>●高齢者と子供関連給付費の推移
出所:大和総研の資料を基に本誌作成
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 「出生率を1.8まで回復させ、名目GDP(国内総生産)を2割増やして600兆円にする」。首相の安倍晋三は9月24日、経済成長を目指す新たな3本の矢として、①希望を生む強い経済②夢を紡ぐ子育て支援③安心につながる社会保障──を掲げた。2020年代半ばとした出生率1.8の達成はその実行のための重要な柱である。

 GDPを600兆円にする具体策が見えていないこともあり、実現可能性を疑問視する声は少なくないが、労働力不足が経済成長のボトルネックになっていることは疑いようがない。有効求人倍率は今年5月、23年ぶりとなる1.19倍に達した。