エンゼルプランには文部省(現・文部科学省)、厚生省、労働省(現・厚生労働省)、建設省(現・国土交通省)が関わり、新エンゼルプランは、この4省に大蔵省(現・財務省)と自治省(現・総務省)が加わり、合計6省が勝手に動くような状態となった。強力な司令塔はなかった。

 政治家にしても「少子化対策は、10年単位で効果が出てくるものだし、政策を実施してもその効果と言えるかどうか判定が難しい」(大和総研主席研究員の鈴木準)ため、積極的に牽引役になろうという動きはほとんどなかった。

 少子化を食い止める手立ての一つは共働きで子育てをする家庭を支援する仕組みだ。しかし、子供を引き受ける時間の短い幼稚園は定員に空きが出る一方で、保育時間の長い保育園には待機児童が増える状況は長く続いた。

 原因は幼稚園を管轄する文科省と保育園を受け持つ厚労省の縦割りである。昨年春、消費税引き上げで生まれた財源を使って幼稚園と保育園の中間的な役割を果たす認定子ども園の整備が本格化した。ようやく政治が動いたのは、「政治家が待機児童問題は有権者の関心を引きやすいと気づいたから」(少子化関連官庁の幹部)。時すでに遅しの感は否めない。

少子化・人口減対策は後手に回り続けた
●少子化などへの政策と環境の変化
1989年 1.57ショック 合計特殊出生率が1.57になり、少子化の危機が世の中に認識されるきっかけになった。
1994年 12月 エンゼルプラン策定 初の本格的な少子化対策。低年齢児受け入れ保育所の倍増、延長・休日保育の整備、学童クラブの普及など、働く親を支援して子育てをしやすくする施策を中心に立案した。
1999年 12月 新エンゼルプラン策定 エンゼルプランをさらに充実させた。保育、子育て支援のための低年齢児の受け入れ枠の拡大や延長・休日保育の推進、育児休業の取りやすい環境作りなどを盛り込んだ。
2003年 9月 内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)が置かれた 少子化対策で初の担当大臣。
2008年 2月 新待機児童ゼロ作戦 2017年までの10年間で、保育所などの受け入れ児童数を、100万人増やすなどの目標を設定。待機児童を減らす子育て支援で少子化に歯止めをかけようとした。
2012年 8月 子ども・子育て支援法など関連3法成立 幼稚園と保育園の両方の機能を備える認定子ども園の整備をはじめ、子育て支援をさらに拡充。
2014年 8月 『地方消滅』出版 元総務相の増田寛也氏が地方の多数の都市が将来、人口減で消滅すると予測し、大きな注目を集めた。
2014年 11月 まち・ひと・しごと創生法施行 人口減少対策と東京一極集中の是正のために地方創生が必要だとしている。

国民の生活水準は2割低下

 政官民の問題先送りは、ここにきて大きなツケとなって跳ね返りつつある。まず一つは、社会保障費の負担増である。例えば公的年金は年金を受給するお年寄りが増える一方で、支え手の現役世代が減少を続けている。

 97年度から2012年度までの16年間だけを見ても、年金受給者が3942万人と1300万人も増えたのに対し、支え手の現役世代(保険料を負担する年金加入者)は、5839万人と63万人減っている。2004年の改革で、年金保険料を2017年度まで段階的に引き上げ、18.3%にするという対策が打たれているが、国民の将来に対する不安はむしろ高まる傾向にある。実質賃金が増えているのに消費が盛り上がらないのは、将来不安が一因と言われている。

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