カギを握る平時の働き方

 あの日、首都圏の多くの駅や鉄道路線で大混乱に陥ったのは、「とりあえず会社に行かなくては」と多くのビジネスパーソンが考え、行動したためである。インフォテリアのように、早い段階で自宅待機などの指示があれば、あれだけの混乱は避けられた可能性が高い。

 平野社長が即決できたのは、インフォテリアが普段から、会社以外の場所で仕事をする「テレワーク」の導入に取り組んできたからでもある。

 2011年3月の東日本大震災後、緊急時に社員の安全確保を優先しつつ業務を継続することを目的に、テレワークなど柔軟な働き方を積極的に取り入れてきた。社員に配布しているタブレットなどを使い、ネット経由で会議することも当たり前になっている。

 2015年8月からは、最高気温35度以上が予想される日にはテレワークを推奨する制度も開始。当日の天気予報で最高気温が35度以上になると、社員に自動的にメールが送られる仕組みを作っている。

 テレワークのような制度をうまく運用するための条件として、平野社長は「役職の上の人間が実践すること。会社に出ないことで申し訳なく思ったり、評価が下がるではないかと不安がったりすると、使いにくくなる」と言う。18日も、本部長クラスでもテレワークに切り替え、社内の会議に自宅から参加した社員もいた。

 最近では多くの企業が在宅勤務制度などの導入を進めている。ただ、制度だけ用意しても、経営者が日頃から柔軟な働き方や生産性について意識していなくては機能しない。平野社長は雪とは無縁のシンガポールにいながらも、東京の状況にきちんと配慮していたことで、18日も素早く決断できた。

 「無理して会社に出なくてもいいようにすべきだ」。1月18日、混乱に巻き込まれた当事者も、駅での大混雑などを映像などで見た人も、誰もがそう思っただろう。ただ、首都圏の交通網が大雪で影響を受けるのは年に1回あるかどうか。1月18日の「悲劇」も、何ら対策がないまま忘れられかねない。同じ混乱を繰り返さないためにも、個々の企業レベルで実行できることがあるはずだ。