挑戦する組織に変える「大失敗賞」

 個人や部門の功績に対する表彰制度は、多くの会社が導入していることだろう。毎年同じようにやっているだけではマンネリ化しがちだが、使い方によっては組織風土に大きな影響を与えることが可能だ。

 大阪府堺市に本社を置く金属部品メーカーの太陽パーツ。売上高は56億円、約200人が働く同社には、「大失敗賞」と呼ばれる制度がある。

 ルーツは1992年。ある社員がカー用品を開発し、自動車用品販売の大手チェーンから受注獲得に成功した。それまで同社はBtoBのビジネスが中心で、量販店向けの商売は初めて。量産準備を進めていたものの、半年後にその商品が店頭から外され、在庫などで約5000万円の損失を出してしまった。

 中小メーカーにとって、自社製品を生み出せるかどうかで利益率が大きく変わってくる。同社にとって巨額の損失となったが、城岡陽志社長は「ここで怒ったら、二度と夢の自社商品ができなくなる」と考えた。そこで、失敗は新たな販路を開拓した結果と前向きに評価し、「大失敗賞」をその社員に贈った。城岡社長は「店頭の商品がすぐに入れ替わる量販店向けのビジネスのリスクが身を持って体験できた。果敢にチャレンジして得られたノウハウを会社に残し、失敗を次に生かすことが大切」と話す。

自分が選ばれた「大失敗賞」の目録を持つ城岡陽志社長
自分が選ばれた「大失敗賞」の目録を持つ城岡陽志社長

 大失敗賞は毎年、春と秋の2回選ばれ、2万円の賞金も贈られる。2015年の秋では、トイレの部品で、同社が担当していた3機種のうち1機種の受注を他社に獲られた担当者が選ばれた。仕事は失ったものの、材質や設計を工夫してコストダウンに成功し、2機種の受注は死守したことが評価された。

 過去には城岡社長自身が受賞したこともある。事業拡張のために新工場を作って設備投資したものの、思ったように受注が取れずに投資が無駄に終わったためだ。

 太陽パーツの事業の特徴は、多品種少量にある。大手企業や他社がやりたがらないような分野で高いシェアを獲得する戦略だ。新しい顧客を開拓するには、過去の失敗を引きずるのではなく、次の挑戦への糧へと替えていけるかどうかがカギになる。

 「ゲーム感覚も取り入れながら仕事を楽しくすれば、チャレンジする社風が生まれ、消極的な社員でも前向きになる」と城岡社長。大失敗賞の贈呈式でも、必ず冗談を言って場を和ませることを意識しているという。

 挑戦する社風が醸成されたこともあり、高い位置から滑らかにスライドして降りてくる昇降ラックなどの独自製品の開発にも成功している。最近では、医療機器向けなど取引先も拡大。太陽パーツは35年間一貫して業績を伸ばし続け、一度も赤字に転落したことがない。

 「チャレンジしよう」。経営者や管理職なら、誰でも一度は部下に向かって言ったことがあるはずだ。口で言うだけではなく、部下が失敗を恐れずに果敢に挑戦できるような雰囲気を作ることも忘れてはならない。