2017年1月16日号の日経ビジネスの特集「宇宙商売 ビッグバン」では、宇宙の商用利用が進んでいる現状を詳報した。宇宙にロケットを飛ばしたり、衛星を打ち上げたりするのは限られた企業しか手掛けられないかもしれない。一方で、衛星データをうまく活用すれば、地上からでも宇宙は十分に活用できる。その利用方法は幅広い。「宇宙の目」をどう使うか。工夫次第では地域産業の活性化につながるかもしれない。

 2016年12月21日、熊本市内にあるホテルで内閣府宇宙開発戦略推進事務局が主催する「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)」の第1回分科会が開かれた。S-NETは宇宙をキーワードに新産業や新しいサービスの創出を目指すネットワーキング組織で、全国の関心ある企業が参加している。

昨年12月に熊本市で開かれた宇宙活用の分科会

 議論された主要テーマの一つは熊本県で盛んな「林業」だ。特集でも触れた通り、既に農業では衛星画像を使って農作物の生育状況を分析する技術の実用化が進んでおり、漁業では海水温や潮流などの衛星データを集め、養殖の効率化に結び付けようとする試みがある。同様に林業でも「衛星データをうまく使えば競争力を高められる」と分科会で登壇したウッドインフォ(東京都中野区)の中村裕幸代表は期待する。

宇宙の目で森林資源を把握

 ウッドインフォは情報通信技術(ICT)を活用し、林業の効率化を進めようと取り組むベンチャー企業だ。森林を3次元レーザースキャナーで計測し、地形や立木の位置、樹木の種類や形状などを細かく正確に把握できるシステムの開発を手がけている。このデータを基に付加価値の高い木を選び出して伐採することで、林業の生産性を高めようとしている。

 この地上のレーザーを使った森林資源把握の弱点は、カバーできる範囲が限られることだ。人が歩き回って計測する必要があるため「1日2~3ヘクタールが限度」(同)という。衛星画像があれば広大な森林を俯瞰し、土壌の質や日当たりなどが良く、立木の生育に適したエリアを見分けられる。伐採するエリアに目星をつけて、細かい状況把握には地上でやるという合わせ技を使えば、レーザー計測の弱点が補えるわけだ。

 鹿児島大学農学部の寺岡行雄教授は「昭和30年代に植林されたスギなど、国内には利用可能な豊富な森林資源がある」と指摘する。だが、実際に利用できるのは全体の3割程度といわれる。山から製材所に木材を輸送する手間を考えると、林道に近いエリア以外で伐採しても、採算が合わないからだ。

 残りの7割を使っていくためには、林道を通して搬入の手間を省いていく必要がある。この課題を克服するのにも「生育状況を俯瞰して育ちの良いエリアを特定できる宇宙の目が生きる」(ウッドインフォの中村代表)という。衛星画像があればこうしたエリアに効率よく林道を通す計画を立てられるからだ。

 ウッドインフォは既存の計測システムに衛星のデータも取り込めるよう足元で開発を進めている。農業、漁業に加え林業まで、1次産業の多くの分野で衛星の活用が見込めるようになってきた。うまくいけば、こうした産業に頼る地方経済の活性に繋がっていくだろう。