カラニックの両親に訪れた不幸

 インドの問題が報じられたあと、ウーバーのエグゼクティブリーダーシップチームを構成するメンバー6人が連名で取締役会に非公開の書簡を提出した。引用しない、書き手もばらさないを条件に読み上げてもらったこの書簡には、社内の雰囲気がインドのレイプ事件に対する対応で一変した、変化を求める声がどんどん強まっていると書かれていた。また、執行に関与しない独立の会長を置くこと、会社の事業について取締役は社外で語ってはならないと決議することを求めてもいた。カラニックと親しく、外部のメディアに話をよくするアリアナ・ハフィントンを狙い撃ちにした決議だ。

 もっと大事な要求もあった。トップレベルの責任追及だ。まずは、側近中の側近でウーバーきっての交渉役だが、韓国の不祥事にもインドの不祥事にもかかわっているエミル・マイケルの馘首である。カラニックについても、事業から完全に離れる形で3カ月以上の休暇を取らせることを求めていた。

 もうひとつ、カラニックに長期休暇を求める理由があった。2017年5月末、カリフォルニア州フレズノで川下り中に、カラニックの母親ボニーが死亡、父親ドナルドも重傷を負う事故があった。その直後、幹部と個別面談をしていたとき、喪に服するという意味もあるし、メディアに吹き荒れている嵐を鎮める効果も期待できるのでしばらく仕事を休もうかと思う、という話がカラニックからあったという。どこまで本気なのかという問題はあるわけだが。

 このあたりについて決着を付けるため、6月11日の日曜日、エリック・ホルダーの法律事務所、コビントン&バーリングのロサンゼルス事務所で会議が開かれた。取締役会は社外秘のホルダーレポートを検討した上で、47項目の勧告を決議する。好戦的なウーバーの文化的価値(「出る杭となれ」「がんばり続けろ」)を書き換える、社内イベントでアルコールを禁止する、匿名で苦情を申し立てられる仕組みを用意する、カラニックに集中している権限を一部委譲するなどである。

 エミル・マイケルの解雇も決議された。資金調達にかけてシリコンバレー史上随一と言えるマイケルは、このあと、カラニックに「次に狙われるのはきみだよ」と伝えたが信じてもらえなかったという。