元社員にも嫌われ暴露される

 この好戦性はどこにでも現れる。社内の会議でも、カラニックの荒っぽい対応は社員に感銘を与えたり反発を招いたりする。取締役や出資者の接遇においてもそうで、疑り深く情報を出したがらない。報道関係者への対応でさえ荒々しかったりする。

 だから、元社員には暴露話を語られるし、味方になってもおかしくなかったところが必ずと言っていいほど敵に回ったりするのだ。たとえばグーグル。ここは仲間になっていてよかったはずだ。2013年にウーバーに出資し、4年後の現在、その持ち分は数十億ドルにも達しているからだ。であるのに、ファウラーやグレイボールのいざこざが起きた数週間後の2月末、グーグルは、自動運転トラックのオットーをウーバーが買収するのに絡めてウーバーを訴えた。オットーを創業した元グーグルエンジニアのアンソニー・レバンドウスキーが、数千件もの社内文書をグーグルから盗んだというのだ。

 この章の執筆時点で陪審裁判に向けた手続きが進められているこの裁判では、ウーバー、グーグル、オットーの幹部に対する事情聴取の内容や社内文書、メールなどが大量に公開された。この情報を丹念にたどると、レバンドウスキーが問題の文書をダウンロードしていたとカラニックは買収前に知っていたことがわかる。であるにもかかわらず、カラニックは、シリコンバレーの風変わりなエンジニアを基準に考えてもちょっとどうかと思うようなやり方をする人物に大きく賭けたわけだ。ウーバーの法務チームが買収リスクの評価をストローズ・フリードバーグに依頼したが、その報告書がウーバー取締役会に提出されなかったことも、この情報からわかる。

 グーグルとウーバーの争いを見ていくと、あちらでもこちらでも関係がこじれているのがわかる。たとえば、カラニックと取締役会の風通しがもっとよかったら、危険な買収は思いとどまることになったかもしれない。グーグルはウーバーに出資しているのに、開発中の自動運転車でライドシェアリング市場の覇権を握ろうとしていると、カラニックはなぜか思い込んでいる。そして、グーグル創業者のラリー・ペイジは、よく知るようになってトラビス・カラニックを嫌っている。