2017年の年の暮、ソフトバンクグループがシェアリングエコノミー大手のウーバーに大型出資を決めたと報道が相次いだ。ソフトバンクは数千億円をウーバーに投資する模様だ。ウーバーは2009年に創業し、世界各国のタクシー業界や規制機関と激しいバトルを繰り広げながらも、会社評価額は5兆円を超える規模にまでケタ違いに成長した。ここまでウーバーを大きくした前CEO、トラビス・カラニックは何者か? 世界的ベストセラー『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』の著者、ブラッド・ストーンの新刊『UPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れた』から、一部を抜粋して連載する。

UPSTART(アップスタート)とは、成功を収めた人物で、経験豊富な年長者や確立された手法をあまり尊重しない者のこと。そう、シリコンバレーの破壊者たちのことだ。シリコンバレーで最も注目を集めるウーバーとエアビーアンドビーの2社のこれまでとこれからを追った。

著者:ブラッド・ストーン
ブルームバーグニュースのシニアエグゼクティブエディター。ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)の著者。15年以上にわたり、シリコンバレーについて報道してきた。カリフォルニア州サンフランシスコ在住。著者のウェブページは、http://www.brad-stone.com/

 ウーバーの共同創業者、トラビス・カラニックは1976年生まれで、ロサンゼルス郊外サンフェルナンドバレーのノースリッジという中流家庭が集まる地区で育った。父親のドンは陸軍に2年間従軍した経験があり、土木技師としてロサンゼルス市に勤めていた。母親のボニーはロサンゼルスデイリーニューズ紙の広告営業だ。

 グラナダヒルズ高校時代、カラニックは陸上競技部に所属。専門は走り幅跳びで、1600メートルリレーのアンカーも務めた。高校の卒業アルバムには、真剣な顔で右足を前に伸ばした空中姿勢の写真が載っている。全力を出し切るタイプだというのが本人の評である。

 86年式の古い日産セントラに「カットコ」のナイフを積み、一夏をかけて2万ドル分を売り歩いたこともある。カットコというのはキッチン用品のブランドで、学生が売り歩くことが多い。シャープな装いじゃないかなどと冗談のネタにされることもあった。数字の扱いに長け、大学進学適性試験(SAT)の数学で満点を取ったカラニックは、家庭教師もした。

 「数学の試験時間は30分だったけど、8分もあれば全問解くことができた。英語の試験だと肩も首も痛くなるし、30分の試験時間中、ずっと悩み続けることになる。でも数学なら、どんどんマークシートを埋められるんだ」

 高校卒業直後の夏には、級友の父親とふたりでニューウェイアカデミーというSATの予備校を立ち上げた。パートナーの勤務先である韓国系の教会を通じて募集したところ、何百人もの生徒が集まり、UCLAに入学したカラニックは、土曜日の午前中、ワイシャツ・ネクタイ姿で「1500点以上」というクラスを教えることになった。クラス名は、生徒やその親に対する宣伝文句でもある。本人の言葉を信じるなら、家庭教師として教えた最初の生徒は成績が400点も上がったそうだ。

ウーバーの共同創業者、トラビス・カラニックとは何者か(写真:ロイター/アフロ)