試作から量産までには「死の谷」がある

清水氏が2004年に発表した8輪のEV「Eliica(エリーカ)」

順調に試作車ができたのに、なぜ量産や製品化に至らなかったのですか。

清水氏:そこが難しいのです。

 経営論で言えば、私は試作車を作ってナンバーまで取ったし、「魔の川」は渡りきりました。ですが、「死の谷」は越えられなかったのです。

 どういうことかと言うと、アイデアを試作品に作り上げるまでが「魔の川」で、その試作品から製品に仕上げるのが「死の谷」です。製品化というのは、信頼性・耐久性・安全性の証明が必須です。ここが、EVにおける「死の谷」なんですね。

 「死の谷」は一見すると分からない。だから試作品と「死の谷」を渡った後のクルマは、見た目は同じに見えるでしょう。けれども、商品になるのは信頼性、耐久性、安全性を証明できたものだけなのです。

なぜ、シムドライブではそれができなかったのですか。

清水氏:一言で言えばカネです。試作品を作るのに、例えば10億円かかったとして、その信頼性、耐久性、安全性を証明するだけで、200億~300億円はかかります。

 大量のクルマを作って衝突試験や走行テストをする、設計をもっと洗練させて量産に適したものにする、値段を考えてより合理的に作れるようにする・・・・・・。そういうプロセスが、量産化への道です。カネと時間をかければ、そこは証明していけますが、それができなかった。

 私はずっとやってきたけれど、いつも「魔の川」まではうまくいって、「死の谷」に足をかけようとしたが、渡ることはできませんでした。資金を集められても、せいぜい1回10億円程度なんです。それでできるのは試作車レベルなんですよね。だから私の作ったクルマは1台もまだ、商品になっていないのです。