米国・中国・ドイツで開発競争が激化

全固体電池の試作品。電池自体に加え、システム全体の簡素化も期待される

英ダイソンは全固体電池のベンチャーを買収し、開発を加速しています。ダイソンがどのような電池を出してくるか、研究者の間で噂になっていませんか。

菅野氏:全然分かりません。あまり情報は聞こえてきませんね。

やはり、先頭を走っているのはトヨタですか。

菅野氏:トヨタでしょうね。

菅野先生などの基礎研究のおかげで、素材開発は進んできました。一方、製品化に向けた各社の生産プロセスの開発はどんな状況と見ていますか。

菅野氏:電池が実用化されるまでには、我々のような基礎研究から応用研究、そして実際のデバイスの生産というように、それぞれの段階でギャップがあります。メーカーが実際のデバイスとして製品化するのが一番の課題ですが、いつまでに製品化するという宣言もしているところを見ると、それは多分、乗り越えたんだろうなと思います。

 固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています。競争はなかなか激しいですよ。

全固体電池を使えば、EVの走行距離がガソリン車を超えてしまうということも起こり得るのでしょうか。

菅野氏:全固体電池がEVでどういう使われ方をするのか、あまり分からないですけれども、(電池の)パッケージを小型化できたり、エネルギー密度を上げられたり、長く走れたりといったメリットは、多分あると思います。

 可能ならば、やはり充電速度を上げたいですけれども、たぶんそれは次のステップでしょうね。

 クルマが道を走ったら充電できたりとか、ボタンを押したらクルマが迎えに来たりとか、そういう将来が見えてきていますよね。全固体電池によって電池の実力がもっと上がれば、そういった未来もたぶん一気に近づくでしょう。

全固体電池が、EVのあり方を変えるということですか。

菅野氏:今はまさに、全固体電池がものになるかどうかという瀬戸際のようなところでもあります。これまでの電池とはそもそもの発想が違うので、うまくいくならば、たぶん行き着く先も違うものになるだろうと期待しています。