さい帯血という血液を使った医療行為を無届けで行った医師らが先日逮捕されました。さい帯血は、お母さんと赤ちゃんをつなぐへその緒から採取される血液のこと。再生医療の現場で使われています。いま、さい帯血をめぐって何が起きているか。そして、私たちが気をつけるべきことは? この問題についての「いまココ!」をお伝えします。

 他人のさい帯血の違法な投与が行われていた11の医療機関に業務の一部停止命令がなされたのは、今年(2017年)の6月末のこと。厚生労働省の立入検査で判明し、その後、調査が行われていましたが、関与したさい帯血販売会社や医師など6名が再生医療安全性確保法違反の疑いで、このほど逮捕されました。

 逮捕された6名は、2016年2月から2017年4月にかけて、東京や京都のクリニックで患者7名にさい帯血を違法に投与した疑いがもたれています。

 厚生労働省の報告によると、今回逮捕されたケースを含め、東京や大阪、福岡などのクリニックで、2015年11月から今年の4月の間に、延べ100名以上の患者が、がん治療やアンチエイジングの名目で投与を受けたことが分かっています。他人のさい帯血を点滴や点眼で移植し、中には、末期がんの患者に用いたケースもあるといいます。

緊急記者会見を開き、違法なさい帯血投与に注意を呼びかける日本再生医療学会。左は澤芳樹理事長。(2017年7月4日)
緊急記者会見を開き、違法なさい帯血投与に注意を呼びかける日本再生医療学会。左は澤芳樹理事長。(2017年7月4日)

白血病の治療などで行われるさい帯血移植

 なぜ、「違法なさい帯血の投与」が行われていたのか、というのが今回の最大の問題です。さい帯血とは、お母さんと赤ちゃんをつなぐへその緒や胎盤に含まれる血液のこと。つまり、赤ちゃん本人や家族以外にこのさい帯血を投与するということは、第三者の血液を投与することになります。そもそも、第三者への「さい帯血の投与」というのが違法なのかというと、そうではありません。他人のさい帯血は、主に白血病などの再生医療ですでに使われています。

 さい帯血がなぜ白血病の治療に使われるかというと、「幹細胞」といわれる体のさまざまな細胞のもとになる細胞が豊富に含まれている特別な血液だからです。「造血幹細胞」という赤血球や白血球、血小板などの血液のもとになる細胞も豊富で、造血幹細胞は血液をつくる機能が高く、血液のがんである白血病などの治療に有効とされています。

 これまで、骨髄の造血幹細胞を移植する骨髄移植が知られていましたが、骨髄移植は免疫の型が適合するドナーが必要なうえ、骨髄採取の手術ではドナーの負担も大きく、また移植までの時間がかかるため、近年、さい帯血移植をするケースが増えてきているといいます。

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