もう1つの治療法は、外科手術により脳の中に電極を埋め込み、電気的な刺激によって神経を興奮させて、体の動きを促す脳深部刺激療法(DBS)という方法。ですが、こちらも効果は次第に薄れていくといいます。髙橋教授は「どちらも症状を一時的に緩和する対処療法でしかなく、病気そのものは止められず、また進行すると効きが悪くなる。根本的な治療法が待たれています」と指摘します。

<b>髙橋 淳(たかはし・じゅん)</b><br />京都大学iPS細胞研究所(CiRA)臨床応用研究部門・神経再生研究分野・教授。京都大学医学部卒業。同大学付属医学部脳神経外科で勤務後、1995年から2年間米国ソーク研究所研究員。2007年京都大学再生医療科学研究所生体修復応用分野准教授を経て、12年から現職。
髙橋 淳(たかはし・じゅん)
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)臨床応用研究部門・神経再生研究分野・教授。京都大学医学部卒業。同大学付属医学部脳神経外科で勤務後、1995年から2年間米国ソーク研究所研究員。2007年京都大学再生医療科学研究所生体修復応用分野准教授を経て、12年から現職。

ドーパミンを作る神経細胞を移植

 そこで考えられたのが、「ドーパミン神経細胞の移植」です。ドーパミンを作る神経細胞自体を脳の中に移植することでドーパミンを増やすことはできないか──。海外ではすでに、1980年代から胎児の神経細胞を移植する臨床研究が行われてきました。約400例の臨床研究が行われ、改善がみられた症例も報告されましたが、中絶胎児の神経細胞を用いる点や十分な細胞が得られにくいという点など問題も多くありました。

 ところが、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞の登場により、事態は大きく動き始めます。これらの細胞からドーパミン神経細胞を作ることができれば、それを患者さんに移植することでパーキンソン病に効果的な治療ができるのではないか──。髙橋教授のグループは、多能性幹細胞からドーパミン神経細胞を作る試みを始めます。その詳細は次号でお届けします。

今回の幹細胞かるた

「の」 脳の細胞外胚葉からできあがる

受精卵が細胞分裂を繰り返し、やがて組織や臓器を形成して一つの個体を形づくる過程を発生といいます。発生初期の細胞はさまざまな種類の細胞になりうる能力を持ちますが、発生が進むにつれて三つの細胞集団に分かれて運命が決定づけられます。外胚葉という細胞に分かれた細胞は、皮膚や歯、目や神経系を形成します。他の細胞集団はそれぞれ内胚葉および中胚葉と呼ばれ、外胚葉と合わせて三胚葉と呼びます。

出典:「幹細胞かるた」 企画・制作:京都大学iPS細胞研究所、デザイン:大隅 英一郎(picto inc.)、イラスト:石津 雅和(FiTS)

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