先日、iPS細胞を使った新しい臨床試験(治験)を始めると京都大学医学部付属病院とiPS細胞研究所(CiRA/サイラ)が発表しました。これまで根本的な治療が困難とされていたパーキンソン病です。研究を目的にした病気の治療で、患者にiPS細胞の移植が認められたのは、網膜、心筋に続き3種目。長年研究を続けてきたCiRAの髙橋教授にお話を伺い、2回にわたりお伝えします。今回は、パーキンソン病治の原因と治療の歴史について。

京都大学iPS細胞研究所制作の「幹細胞かるた」。最後で解説しています

 パーキンソン病とはどんな病気かご存知ですか。脳の異常が起こることで、思うように体が動かせなくなるなど、体の動きに障害が出てしまう病気です。何年もかけてゆっくりと進行し、手足が震えたり、筋肉がこわばったり、歩く速度が遅くなったり、姿勢が保てなくなるといった症状が現れます。

 今は亡きボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリは、30年以上この病気と闘っていたことが知られています。また、大ヒット映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公を演じたマイケル・J・フォックスさんも29歳でパーキンソン病を発症したことを公表。25年以上経った今でも、病気と闘いながら活動しています。

 以前は、「パーキンソン病を発症すると10年後には寝たきりになる」といわれていましたが、現在は、効果的な治療薬が開発され、病気の進行を食い止めることが可能になってきているのです。とはいえ、完治できる根本的な治療法はなく、日本では難病に指定されています。

鍵はドーパミン、誰もがかかる可能性あり

 難病というと、ある特定の人がかかる病気だと思いがちですが、「パーキンソン病の患者数は日本では約16万3000人、米国では約100万人いるとされています。しかも、近年、増加傾向にある」と髙橋教授は話します。パーキンソン病の多くは50歳以降に発症するため、高齢化が進む日本では増加傾向にあるのです。つまり、年をとれば、誰でもパーキンソン病になる可能性はあると言えるのです。

 そのカギを握るのが、脳内にあるドーパミン(ドパミンともいう)。私たちの脳の奥の「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部位で作られる神経伝達物質で、神経を興奮させる働きがあり、やる気物質や快感物質などともいわれていますが、体の動きの調整もしています。私たちが体を動かすときには、脳から全身の筋肉に「動かせ」という指令が出てはじめて体は動きますが、この指令は、ドーパミンを通じて伝えられるのです。