4つの遺伝子でなくてもiPS細胞はできる?

 ということは、前述したiPS細胞の定義には、その4つの遺伝子に関する記述を含めるべきと思うのですが、違うのでしょうか。「確かに、当初は山中因子と呼ばれる4つの遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)でつくられていました。でも、今ではつくり方も多様になっています。山中教授の発表以来、世界中の多くの研究者がiPS細胞の作製方法を開発していて、違う遺伝子を使ったり、遺伝子でなくたんぱく質を入れる方法も試みられているので、『iPS細胞とは?』と聞かれると前述の答えになります。CiRAでもその後さまざまな作製方法が研究され、より安全性の高い方法を確立しています」と戸口田副所長。iPS細胞は発見から10年の間に着々と進化を遂げていたのです。

京都大学iPS細胞研究所制作の「幹細胞かるた」。最後で<a href="./?P=5#section1">解説</a>しています。
京都大学iPS細胞研究所制作の「幹細胞かるた」。最後で解説しています。

「がん化しやすい」2つの問題を克服!

 なぜ、iPS細胞は進化する必要があるのでしょうか。それは、当初は安全性に関して問題を抱えていたからです。ES細胞も、他人の細胞を移植するために拒絶反応が起こる可能性や、受精卵を壊すという行為が倫理的に許されるのかという問題を抱えていました。でも、一方では、ES細胞は受精卵からつくり出すため自然の細胞に近いとされ研究が進んでいましたが、iPS細胞は、遺伝子を入れて細胞を初期化するという点で思わぬ異常が起きるのではと懸念されていたのです。最大の懸念は、「がん化しやすい」ということでした。

 その理由は2つ。まずは、4つの遺伝子の一つ、c-Mycががんを発生させる可能性を持つ遺伝子だということ。つまり、がん遺伝子を使うから、がん細胞になってしまうわけです。そしてもうひとつは、細胞に遺伝子を入れるのに使用したウイルスの問題。細胞に4つの遺伝子を侵入させるために当初使っていたレトロウイルスが細胞にもともとある遺伝子に傷をつける可能性があり、その結果、細胞ががんになる危険性があったのです。

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