iPS細胞や再生医療について関心はあるけど、何が行われているのか分かりにくい。これって私の正直な実感でもあります。ニュースで頻繁に取り上げられたり、ネット上にもさまざまな情報があふれていますが、一方で誤った情報が多いことも問題になっています。今回は、市民や患者の視点に立った医療情報の見方について考えたいと思います。

先日、「患者・社会と考える再生医療」というイベントに参加してきました。「“再生医療の研究をめぐる情報”について、みんなで考えてみませんか?」をテーマに、医師、研究者、市民が一緒になってディスカッションなどを行うというなかなかユニークな試みです。
主催は日本再生医療学会。学会の幹事で、京都大学iPS細胞研究所(CiRA/サイラ)上廣倫理研究部門の八代嘉美准教授が中心となり、午前中は医師、研究者による講演、そして午後からホームワークタイム。参加者はグループに分かれ、自分たちが患者として再生医療についてどのような情報を求めているのか、何が足りないのか、どうしたらいいのかという問題について、語り合い、アイデアを出し合いました。

その中で最も多かった課題は、「今、何が行われているか分からない」「再生医療が必要になったらどこに連絡すればいいのか」「そもそも私たちは治療を受けられるの?」といったもの。つまり、正しい情報をどこに求めるかということでした。こうした課題を解決するには、伝える側が「正しい情報をいかに分かりやすく伝えるか」という点が重要だと痛感しました。
iPS細胞やES細胞を用いた再生治療はまだ研究中
iPS細胞の登場によって、iPS細胞から人の組織や臓器をつくり、それを移植することで「今まで不可能だった治療が可能になる」、「夢の再生医療が現実になる!」と大きな話題になりました。実際に、再生医療の研究はここ数年、ものすごい速さで進んでいて、「世界初の快挙! iPS細胞を用いた臨床手術成功」などのニュースを目にする機会も多くなりました。
とはいえ、iPS細胞やES細胞を用いた再生医療は、今はまだ研究の段階で、治療として行われているものは一つもありません(←いまココ)。でも、「iPS細胞を用いた臨床手術成功」といわれると、あたかも治療がスタートしたという印象を与えかねない、のかもしれません。実際にこういった報道がされると、手術が行われた医療機関に問い合わせが殺到するケースが多いといいます。こういった誤解を与えてしまう要因の一つが、医療用語の難しさではないでしょうか。
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