「長期計画はもはや死後」

大変な仕事ですね。

鈴木:私は、同じ一人の人間が仕入れて、その人間が売るというのが商売の原点だと言っているんです。商品を仕入れる者と売る者は、常に情報を共有していなければならない。

それは、POS(販売時点情報管理)システムがあればよいというものではない。

鈴木:POSなんて単純な機械でしかないんです。ところが、POSから出てきたデータを、どうしても使いたがるんです。しかし、マーチャンダイジングがきちんとしていなかったら、そのデータは実態を表していないんです。売り切れて商品がなかったら、その分は数字には出てこないわけですからね。

仮説を立て、試してみて、その結果をデータで見ることによって、初めて有益な情報になるわけですね。 

鈴木:例えば、Aという商品が50個、Bという商品が30個あったとする。Bはすぐ売れ、Aは数が多いから遅れて全部売れた。そうすると、数字で売れ筋として出てくるのは、50個の結果だけです。だけど、本当は最初の30個の方が売れ筋なんです。我々は過去の統計数字でなるべく、ものを考えないようにしているんです。

「重要なポジションほど人を減らせ」

先を読んで働き続けなければいけない。

鈴木:僕が会社の中で常に言っているのは、先見性というのは、言葉としては立派だけれども、経営の中では使えない。長期の計画という言葉も、ほとんど使えない。だって、為替一つとったって、1年先、1カ月先は読めないでしょう。そういう時にデータとして立派な数字をみんなで作り上げたって、意味がないでしょう。これだけ大きく揺れている時代には、やっぱり変化対応で考えざるを得ないんです。ですから僕は今、重要なポジションほど人間を減らせと言っているんです。

一人で考えさせろ、と。

鈴木:それと、人数が多かったら、情報が共有できません。だから、重要なポジションほど人数を減らす。商品のバイヤーの数は、バブルの時代からどんどん減らしています。

一般には、重要なところほど人員を投入します。

鈴木:投入するとみんなおかしくなってしまう。減らさないと育ちません。山で言えば、間伐みたいなものですよ。質で量を生むことはできても、量で質を良くすることは不可能です。むしろ悪くすることがある。

 変化があればあるほど、質を重んじなくちゃいけない。本部の人員は、10年前とほとんど変わりません。一時増えたけれど、それをダーッと減らしてきた。景気が悪くなったから人件費を削減しろという考え方はおかしい。

 業革は以前、ヨーカ堂が減益になった時に始めたのですが、情報に対するコストだけは惜しんではいけないと言い続けてきました。電車で間に合うところヘタクシーに乗って行くようなことは絶対してはいけない。

 しかし、衣料ならば、それまでは「赤」と文字だけで書いていたのを、きちんとカラーサンプルを付ける。あるいは全部写真を撮って配布する。これにはものすごいコストがかかるわけですが、情報化時代なのだから、情報は絶対重視すべきだと言い続けて、やってきた。

 今でも、セブンイレブンでは、毎週800人も使って情報を集めている。他人から見れば、ばかばかしいことだと言われるわけです。だけどこれがあるからやっていけるんですよね。

セブンイレブンも値下げしましたが、商品価値に占める価格の要素はかなり大きいのではありませんか。

鈴木:今、マーケットプライスは全部下がっているんです。メーカーが出した指示価格というのは、バブルの時代は、ある程度指示価格だったかもしれない。けれども、スーパーを見ても、価格は実態として下がっているわけです。不況になれば価格が下がる。それにセブンイレブンが合わせるのは当たり前なんです。

価値を高めるというのは、値下げしながら品質は上げていくのですか。

鈴木:今までの売り手市場の時のメーカーの感覚というのは、固定費プラス経費で、積み上げて利益を考える。従って売れないとコストが高くなる。こういう話になるわけでしょう。それはおかしいと思うんです。売れないんだから、メーカーの方も一生懸命になって値段をどうやって下げるか、どう製造コストを下げるかをとことんまでやり、そして我々もコストを下げていかなくちゃいけない。