鈴木さんは「仮説を立てて、論理的であれば、やらせてみる。それで失敗しても罰しはしない。発想が大事なのだ」と言われていますが、この局面で重要なのも、それですか。

鈴木:この場合、経験をもとに行くんだったら仮説ではない、と思うんです。情報には経験情報と先行情報の2つがあります。仮説は先行情報が7割ないと成り立たない。ところが、どうしても経験情報が7、8割になってしまう。だから先行情報を探して、やってみて、失敗したのだったら、私はいいと言っているんです。

弁当の話だと、6、7位の商品が伸びているのを見て、仮説を立てる。

鈴木:そう。 6、7位の5個を入れたら、ある時間帯で全部売り切れるというのだったら、それを増量することによって先行情報になっていく。なぜ売れるんだろうと。売れた日は寒かったのか、暖かかったのか。先週は雪が降って寒かったと。そうなれば、さらに次の土曜、日曜の天気予報はどうなのか。寒くなるのか暖かくなるのか。環境も天候もきちんと織り込んだうえで、発注していかなければならない。

 バブルの時だと、あまり考えなくても、商品を入れれば売れた。ところが、今のように厳しくなってきますと照準がピタッと合わないとダメなんです。だから経験でやっていくと、縮小均衡になる。結局、商売というのは仮説、検証の連続なんですね。

「仕入れと販売で常に情報の共有を」

絶えず挑戦し、変化していく。

鈴木:商売というのは、変わるといっても、急角度に、直角に変わることは絶対にありません。緩いカーブで変わっていく。明日から全部売れなくなるというのであれば、考えますね。だけど売れない日はないんです。何とはなしに気が付いてみると、少しずつダウンしているだけのことなんですね。

 だからこそ弁当一つにしても、消費者はどういう心理状態で買うのかを、情報の中から探っていくしかないんです。すると今は価格だけではない、絶対価値なんだと分かるんです。その価値の中の要素の一つとして価格がある。ところが値段はものすごく見やすくて、はっきりしていますから、どうしてもそこにとらわれてしまう。

値下げすればいいわけではない。

鈴木:何にもならない。マイナスです。衣料品であろうと何であろうと、お客様は価値というものに執着している。価格じゃない。みんな分かりやすいところに結論を求めたがるのです。数字にしても過去のトレンドで見たがる。

それで納得してしまうんですね。

鈴木:売上金額だけで見ると、1週間、2週間前の傾向よりも、1年前の傾向の方が、相関があります。極端に言えば春夏秋冬で関係がある。でも同じ傾向といっても、売れている中身が同じでは決してありません。

 アイスクリーム一つとってみたってそうなんです。前年のある日曜日に、アイスクリームが1万円売れ、今年も同時期の日曜日に同じくらい売れたとします。でも、前年と全く同じ商品が売れているわけではない。

 気温の変化によっても変わります。気温が30度以下の時は、脂肪分の割合が高いアイスクリームがよく売れる。でも30度を超えると、アイスクリームというよりも氷菓、甘みの少ないタイプが売れる。また30度以下なら生ジュースがよく売れる。だけど、30度を超えると炭酸飲料がよく売れる。たまたまテレビなんかで宣伝していたりすると、その商品がパッと売れたりする。こうしたことすべてに対応した品ぞろえができているかどうかを点検しないと。