「不振の原因は原点から逸脱していたため」

 福原氏は次のように言葉を続けた。

 「我々の原点である福武書店の社是は、『顧客中心・信用第一』。今回、社長を務めるに当たって、改めて社史を再読した。進研ゼミは後発弱小としてスタートし、圧倒的ナンバーワンになっている。介護事業も1000億円を超える売り上げになり、中国事業は会員数が100万人を超えようとしている。ベルリッツのように130年以上に渡って生き残る語学学校はほかにない」

 「いずれも成長の原動力は、徹底したお客様視点とコミュニケーションだった。現在、不振の進研ゼミは、この原点から逸脱していたのではないか」

 「創業者は『不易と流行の区別を付ける』と語っている。不易の価値とは何か。それは、学びや意欲に寄り添うことであり、向上心とも言い替えられる。これこそベネッセの語源となった『良く生きる』ことの本質。お客様を向いて、全力を尽くしたい」

 創業の言葉を繰り返し引用して抱負を語る福原氏。今回、福原氏は社長に就くにあたって、創業家からどんな言葉を掛けられたのだろうか。創業者の言葉を繰り返す様子からは、原点に立ち戻ろうという意志に加え、福武家に対する配慮も感じられる。

 福原氏が力強く話を終えると、会場からは拍手がわき上がった。

 株主からの質疑応答では事業の知名度の低さに懸念を示す声が続いた。

 ある株主は「ベネッセの事業内容が海外に知られていないのではないか。進研ゼミなど個別事業の知名度はあるが、グループとして社会に貢献していることを伝えるテレビCMなどを放映し、企業価値を上げる方策を考えてもらいたい」と要望。別の株主も、「自分の子供が高校生になり、初めて高校の教材にベネッセが使われていることが分かった。学校への教材提供の実績なども、きちんとPRすべきではないか」と重ねた。

 確かにベネッセの場合、中核事業「進研ゼミ」の存在が大きすぎるためか、ほかの事業展開についてはあまり知らない人も多いはずだ。ベネッセの現在の立ち位置や外の評価を的確に捉えた質問に、福原氏も意見を述べる。

 「これまでも例えば、ベネッセ教育総合研究所などのシンクタンクがあり、研究結果を発表してきた。だが確かに広報活動に迫力がないと思っている」と福原氏は認めたという。

「原田と同じ覚悟で臨む」

 「どうも危機感が薄い気がする。不振の分析なども弱く、会社全体に危機感が弱い気がする。新体制で経営の舵取りを任される社内取締役の3人は本当にやる気があるのか。株価も2400円まで下がり、企業価値の3分の1が吹っ飛んだ。せめてここで、決意表明をしてもらい、何年後に回復するのか、明言してもらいたい」

 業績不振が続く中、厳しい意見を投げかける株主も現れた。こうした声が挙がるのは、当然のことだろう。2017年度を含め3期連続の減収減益見通しである企業の株主総会とは思えないほど、これまでの議事進行は順調で穏やかなものだった。株主の追及に福原氏が答える。

 「危機感は非常にある。これまでどちらかというと我々は、順調に成長してきた優等生企業だった。だが個人情報の事故で痛手を受ける前から、実は(進研ゼミの)会員数は落ちてきていた。そこで今では、デジタル教材の導入や塾との協業などを始めている。一朝一夕にV字回復ができるとは思っていないが、2016年度の減益で、下落に終止符を打ちたい」

 「(今総会後に退任する会長兼社長の)原田は、3期連続の減収減益見通しのけじめをとった。私もこの会社を任されるに当たり、同じけじめのつけかたがあると思っている」

 2017年度でも業績が回復しなければ、福原氏も退任する覚悟がある、ということなのだろうか。「覚悟を持って経営にあたる」「けじめをつける」という言葉が繰り返されたという。