OB株主:「債務超過になってがっかりした。少なくとも営業利益、経常利益、純利益が出資に向けてどの程度黒字になっているのか。現時点でのめどを伝えてほしい。数字を力強く教えてほしい」

 経理担当の榊原聡取締役が登壇する。

榊原取締役:「2016年度(決算見通し)は出資を終えたあと、すみやかに公表したい。シナジー含めた数字を出したい」

 そして最後の質問者へ。

男性株主:「初めて(株主総会に)参加してすごく勉強になった。でも心配になってきた。グローバル競争で本当に戦えていくのか」

野村副社長:「「出資完了後のシナジー効果は新しい経営陣での検討事項。すみやかに検討して改めて(今後の成長戦略について)作成していきたい」

 この男性株主の質問をもって、株主からの質問を切り上げ審議に進む。質疑応答では熱い意見が続いたが、1~6号議案の採決は全て順当に承認された。その後、新たに取締役に就任する野村勝明氏、沖津雅浩氏名、中矢一也氏、石田佳久氏が紹介され挨拶。

 髙橋社長は、最後こう力をこめた。「以上でございます。本日はお越し頂き厚く御礼申し上げます。今後とも変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます」。取締役一同が立ち上がり、開始同様深く頭を下げる。12時53分、シャープの第122期株主総会が終了した。

鴻海傘下入り後の成長戦略は

 出席者数は1029人と、昨年より200人ほど減少。所要時間は3時間23分と、昨年と同じだった。質問者は計18名。そのうち、シャープのOBとみられる質問者は3人いた。苦節と栄光の時代を味わってきたシャープOBにとって、現在のシャープの姿には忸怩たる思いがあるようだ。

 6月末に予定通り出資が完了すれば、髙橋社長がシャープ社長として公の場に出るのは今回が最後となる。5月に開催された2016年3月期の決算会見で「必死にあがいた3年間だった」と振り返った髙橋社長。株主総会での質疑応答の多くは批判だったが、株主の言葉が最も響いたのは髙橋社長自身だったはずだ。

 前日の鴻海株主総会で鴻海側は、さらなる追加の人員削減や信賞必罰の人事制度の導入などを示唆している。今回の株主総会をもって鴻海傘下入りが承認されたが、シャープはまさに今、再生のスタートラインに立ったところ。鴻海傘下での今後の成長戦略を、早期かつ明確に株主に示すことが必要だ。

 熱気冷めやらぬ会場を記者が出たのは13時。
 荒れ模様だった天気は、いつの間にか真夏のような日差しと暑さになっていた。今後シャープが歩む道も、悪路から一転、快晴となるか。

3月にニトリに売却された、大阪市阿倍野区の旧シャープ本社ビル(撮影は昨年、写真:山田哲也)
3月にニトリに売却された、大阪市阿倍野区の旧シャープ本社ビル(撮影は昨年、写真:山田哲也)
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