「シャープはいつまでもシャープ」
男性株主:「私は簡単明瞭に質問します。そこにいる方々、取締役という感じにみえない。今命賭けに戦っているはずなのにだ。なぜ今100円(台)の株価(の株式)を持っているかといえば、シャープを信じているからだ!もっとプライド持ちましょうよ。シャープという名前を生かしなさい。辞めて終わりですか。根性を聞きたい!!」
野村副社長:「シャープの名前は今後も残ります。シャープはいつまでもシャープです」
頑張っていきたいです、と野村副社長が力をこめると、会場からは拍手が起きる。この日初めて、シャープ経営陣の言葉に対して拍手が起こった。次の質問者へと続く。
男性株主:「個人攻撃ではないが、橋本さんと野村さんに聞きたい。お二人の経歴を見ると、OBの片山さん(5代目社長)が暴走をはじめた(当時)、経理と液晶の本部長を担当していました。片山さんを止めることができなかったお二人がなぜ続けるのか。私だったら株主と社員に恥ずかしくて受けない。堺工場(堺ディスプレイプロダクト)が黒字になったのは鴻海のおかげです。片棒をかついだのになぜ取締役を受けたのか」
「CMについても聞きたい。吉永小百合さんをお使いになっていますが、吉永さんは日本一CM出演料のギャラが高いと聞いています。CM担当者に言ってもらいたい。なぜ吉永小百合さんをつかうのか。暴露本をみたら町田顧問(注:町田勝彦元特別顧問、昨年退任)が熱烈なファンだったからとかありますけど」
髙橋社長:「代表して私から答えます。今回の人事は指名委員会、取締役会で決めたことです。SDPについて、黒字化したのは鴻海のおかげちゃうんかってことですが、もちろんそれもありますが、日々の運営の点で今の経営陣の力が強かった」
「2つ目。コマーシャルの件ですが、吉永小百合さんの(業績への)影響は全くないと考えています。いつまで続けるのかということですが、私の在任中で吉永小百合さんは絶大な人気があります。高齢者目線を忘れていないかという点で、ヘルシオ、空気清浄機などで起用させていただいています。深くシャープのことを考えてくれていると思います」
「日本家電はみな討ち死に」
株主総会の開始から2時間半が経ち、初めて女性株主からの質問が始まった。
女性株主:「家にはシャープの製品がいっぱいあるので悲しいけど、頑張ってほしい。(5代目の)片山社長が日本電産に行ったりと、同じようなことをしている人がいます。職業選択の自由で仕方がないということだが、阪急電車や日清製粉なら納得できます。同業他社という点が気になっている。本当に同業他社で新しい事業をしたとき、(シャープ発の技術なのかそうではないのか)判別がしづらいのではないか。これはシャープとしては損害です。契約書の中に同業他社に行かないという文言を入れてほしい」
髙橋社長:「日本電産さんの件ですが、今の事業でシャープと競合していません。冷蔵庫も作っていないし、直接的な同業ではないという点を理解してほしい。もちろん将来は分からないですが」
その後も株主からの質問が続くが、質問が長く意図がくみ取れないものも多いためか、髙橋社長にも少し疲労の色が出始める。
男性株主:「日本家電株式会社はみな討ち死にですよ。シャープには是非がんばってもらいたい。シャープはサムスンに負けた。シャープは鴻海の力を借りて、サムスンに勝てるのか。がんばってほしい。シャープしかない」
「シャープしかいない」と訴える男性株主の声が、少し震えているように感じた。会場からも拍手がおこり、髙橋社長も「ありがとうございます」と頭を下げる。
「いつ黒字化できるんや」
髙橋社長が「議案に関する質問をお願いします。議案に関する質問でお願いします」と訴える。そこで、先ほど携帯電話が壊れたと話していた株主が再び発言する。「新しいシャープの社長(戴正呉氏)はきているのか」
「来ていません。まだ出資が完了していないので」と髙橋社長。前日に台湾の鴻海本社で開催した株主総会で、郭氏は「明日のシャープ株主総会に戴正呉がいく」と発言したそうだが、今日は来ていないようだ。
男性株主が続ける。「ほうか。で、いつ黒字にできるんや」。鴻海の郭会長は4月2日の共同記者会見にて、シャープ黒字化のメドを2年から4年と示唆している。
家電担当の長谷川専務が回答する。
長谷川専務:「できるだけとにかく早期に黒字にします。取締役に残らせていただいて、シャープの業績回復に向けて尽力しますのでよろしくお願いします」
液晶の買い取りオプションに注目集まる
株主総会開始から3時間が経過。まだまだ熱い質問が続く。次に質問する株主が争点として取り上げたのは、鴻海がシャープへの出資条件項目に記載した、「シャープ側に瑕疵があった場合、鴻海がシャープの液晶事業を買い取れる」との内容のオプション。
「鴻海にディスプレー部門だけを譲り渡すと、すでに水面下で話をしているのではないか!」との質問に「ございません!」と強く答える髙橋社長。橋本取締役も「このオプションが発生することは想定していません」と述べる。
髙橋社長:「私どもは全力をあげて出資完了に向けて取り組んでいます。独禁法の関係はあと1か国で承認が下りるのを待つだけです。(液晶部門の)買い取りオプションはシャープが断った、やめたいといったときに発生するものです。完全な不可抗力や、鴻海に瑕疵があれば発生しません。巨大な災害が起こって、工場が買うに値しない場合など、あとは当局が止めに入った場合。しかしこれは想定していません。昨日テリー会長は6月中に出資を完了すると言っていました」
「十分質疑は尽きたと思う。あと2問でお願いしたい」。髙橋社長をはじめ、回答者の表情にも疲労の色が見える。次もシャープOBからの質問だ。
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