OB株主:「シャープが鴻海から出資受け入れを決めた時(注:2月25日の臨時取締役会で鴻海の買収提案受け入れを決定)のことですが、2月24日に偶発債務について提示しています。商売やっていて都合が悪いことを後から言うのはまずいのではないか。そのせいでその後、鴻海側からの出資が大幅に値下がりした」

 OB株主が指しているのは、シャープが鴻海からの出資受け入れ決定後に提示した3500億円の「偶発債務」。偶発債務とは、将来起こりうる負債のこと。偶発債務により、鴻海側の出資金額は1000億円以上減り、最終的に3888億円になった。株主が続ける。

OB株主:「あと、産業革新機構と鴻海をなぜ天秤にかけたのか。私がシャープの現役だったときは競争の商売で100円を下げるために頑張ってきた。なぜもっと上手にできなかったのか」

「シャープは人材の草刈り場」

OB株主:「あとね、片山(記者注:片山幹雄氏、シャープ5代目社長)は東大出で物覚えはいいけど、日本電産へなぜ再就職するのか。シャープが草刈り場になっているんじゃないのか。こんなざまにしたのは皆さんのせいだよ」

 初っ端から熱い株主の言葉に、会場で拍手が起きる。実際、シャープから日本電産に転職している社員は多く、前副社長の大西徹夫氏も5月1日付で日本電産の顧問に就任した。部長クラスの採用は既に100人を超えており、電産の永守重信会長兼社長も「希望があれば300人は採用したい」と、シャープ退職者の受け入れに前向きだ。

 髙橋社長に代わり、橋本取締役が回答する。

橋本取締役:「当社のOBの暖かく厳しい叱咤激励ありがとうございます。偶発債務について説明させて頂きます。当社といたしましては鴻海からの出資をより確実にするため、外部のアドバイザーと協議のうえ発生したものです。当社が行った情報提供は、いずれにしても確実な出資を目指して両社で真摯に協議を進めた結果です」。

髙橋社長:「役員の件ですが、日本電産をはじめ多くの社員が転職している。職業の自由は認められているので、それを止めることはできない。誓約書として会社の知識や情報を得たものを(転職先で)使わないことと明記しています。ここの会社には行くな、とは縛れないので各自の判断になります」

橋本取締役:「雇用の件ですが、鴻海から(出資を)受ける受けないに関わらず、絶えず見直すことが責務だと思っています。戦略提携の効果を最大化するため。(社員)5万人をどうするか。現時点では何も決まっていません」

髙橋社長:「昨日開催された鴻海の株主総会で、テリー会長(郭台銘氏の英語名)からなんとか(出資完了を)6月末をメドに頑張ると言っていただいている」

「3年前に社長になり、経営心情、理念に立ち返りました。OBの方のご指摘の通り、実践できていたのかという問題はその通りです。完璧であったとはいえません。3年間原点に立ち帰ろうと努力してきました。しかし、残念ながら経営のスピードが世の中についていけなかった。お詫び申し上げたい」

「テリー氏はオオカミ少年」

 続いて2人目の株主

男性株主:「鴻海と革新機構を選択した経緯について聞きたい。私自身は革新機構案がよかった」

 「(鴻海会長の)テリー氏はオオカミ少年。(シャープは)瀕死の状態でついて行かざるを得ない。一部報道で3割の消費者がシャープ製品を買いたくないと言っているという。鴻海に1000億円も値切られ、色々な条件を付けられた。なぜ革新機構と争っているときに鴻海はこの条件を言わなかったのか。約束は大事ですよ」

 鴻海の郭会長をオオカミ少年といった株主は、鴻海側の度重なる出資額の減額、出資条件の見直しなどに不満を持っているようだ。質問後、パラパラと会場から拍手が。

橋本取締役:「なぜ産業革新機構ではなかったのか、ということですが。成長と資金の確保、財務シナジー効果の確保などの点から、鴻海の支援を受けることがベストだと考えました。具体的なところは相手方もあるので、ご容赦頂きたい。確実な出資をいただきたく、両社で真摯に行った結果です」

髙橋社長:「3割はもうシャープ製品を買いたくないとの報道は私も読みました。これは残念なことです。しかし我々も実売のデータをとっておりますが、その結果、幸いなことに凸凹はあるものの相対的に、テレビは特に4K、冷蔵庫も販売数が上がっています。私どもは大きく落ち込みが出ているわけではないと思っています」

 次の質問に移ろうとすると、2人目の質問者の株主が声を荒げる。

男性株主:「なぜ(鴻海の出資が)1000億円減ったのか。当初は仮契約をしなかったのか。社員をクビにしないと言っていたけど、あとからまたひっくり返されたではないか。契約は馬鹿ばっかりしている!鴻海の出資額も納得いかない!!」

橋本取締役:「なぜ1000億円減ったのか、交渉条件が変わったのかについてですが、交渉経緯の詳細はこの場では控えさせて頂きたい。確実に出資していただくことを目指してきた。精査を重ねて本当に両社で真摯に協議をしてきた。その結果が条件変更になりました」

髙橋社長:「経営陣についてですが、私自身はどちら(産業革新機構か鴻海か)に決まろうが退任を決めていました。決して鴻海が途中で変えたから、ということではございません。前の社長がとどまっても悪気はないと思うが、影響力は大きいので、社長を辞めたら相談役はもちろん顧問としても一切残らない。昨年決意していました」

「髙橋社長は舛添と一緒」

 段々とヤジが飛び始める会場。モニター越しでもその熱気が増していることが伝わってくる。
 次の男性株主は例年参加しており、毎年質問をしているようだ。

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