「智仁氏からは突然辞任の申し出」

 「しかしながら、本年2月24日早朝、智仁氏が私の部屋を訪れ、『一身上の都合で、取締役を辞任したい』との申し出がありました。突然のことで私も大変驚き、その場で慰留もいたしましたが、智仁氏の意思は固いものであったので、私は辞任届を受理いたしました」

 「報道のなかには『臨時株主総会』についても言及がありましたので、この件につきましても触れさせていただきます。三森前会長が逝去された後、生前の多大な功績に報いるため、『創業者 特別功労金』の拠出について検討を始めました。当社では、取締役の退職慰労金制度を廃止しておりましたため、功労金等の拠出には株主総会のご承認が必要でありました」

 「このため昨年12月に、臨時株主総会を開催することも1つの選択肢と考え、実務上の手続きと、功労金などに関する検討を同時並行して進めるため、『臨時株主総会』開催のための『基準日の設定』を行い、リリースいたしました」

 「しかし、その後の検討のなかで、当社の今後の経営を見据えたとき、まずは不採算事業を整理し、さらなる業績向上を図ることが、株主様のご期待に応えるものと判断し、臨時株主総会を中止したものであります」

 「一方、功労金等の拠出につきましては、外部の有識者からなる委員会を設置し、その検討結果を受けて、引き続き検討課題としております。以上のような経緯のなか、私どもは智仁氏を含む前会長のご遺族の方々と、その後数カ月間にわたり、当社の将来について何度も話し合いを重ねてまいりました」

 「そして本年5月初旬、お二人を含めた三森家との間で、『今後は三森家と会社側が、当社の発展のために一致協力していく』旨の合意に至り、大変安堵しておりました。ところが数日後に、三森家の方から、『先の合意を破棄する』旨の、智仁氏のメッセージが伝えられました」

「風通しのよい企業風土を作る」

 「さらには5月19日の夕刻、東京証券取引所の記者クラブに対し、筆頭株主と智仁氏らが、当社の役員人事案に反対している旨の文書が投げ込まれたことが確認されました。その後も今日まで、お二人から当社に対して、『株主提案権の行使』はもちろんのこと、役員人事案に対するご意見など、お申し出は一切ありませんでした」

 「私は大変驚きました。なぜなら、今回の社外取締役候補のお一人(三森教雄氏)と、取締役候補のお一人(河合直忠氏)については、それまでのお話し合いのなかで、智仁氏やお二人からも取締役候補としてのご推薦があったからです」

 「その後新聞・雑誌等に報道がなされたことは、ご案内の通りであります。なかには事実と異なる報道もありましたが、当社が個別に反論すれば、さらに報道が過熱し、関係者の皆様に余計なご心配をおかけすることになると危惧し、静観しておりました」

 「本総会では、株主の皆様に直接お目にかかる数少ない機会であり、今回の議案をご審議いただくにあたりましては、本件についてきちんとご説明する必要があると判断し、冒頭のお時間を頂戴した次第です」

 「私は前会長のようなカリスマ性のある経営者ではありません。だからこそ、風通しのよい企業風土を作り、ガバナンスやコンプライアンスへの意識を高めた新たな経営体制で、三森前会長が作られた大戸屋の経営理念の実現に向け、邁進してまいりたいと思います。一方で、創業家を含め、株主の皆様方に私どもの経営に対する考え方をご理解いただけますよう、引き続き努力してまいります」

 「『大戸屋の味を世界に広げたい』、『世界中の人々の、心と体の健康を促進したい』という、故人の理念と志をしっかりと受け継ぎ、当社をさらに大きく成長させることが、私どもの最大の責務であり、志半ばにして亡くなった前会長への、最大の恩返しであると考えております。株主の皆様には、今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申しあげます」

 窪田社長は最後に「ご静聴ありがとうございました」と結び、深々と頭を下げた。双方の言い分の食い違いはあるのだろうが、経営陣としては一連の騒動の内幕を明らかにし、創業家以外の株主の理解を求めた格好だ。10分以上にわたるスピーチを受け、会場からは拍手が起こった。