6月23日、定食店を展開する大戸屋ホールディングス(HD)の株主総会が開かれた。窪田健一社長ら現経営陣と大株主である創業家が対立し、会社側が提案する取締役の選任議案に創業家側が反対を表明する事態となっていた同社。いざふたを開けてみれば会社提案の議案がすんなり通り、紛糾するシーンはなかった。ただ、株主質問では会社の行く末や社内融和について案じる声が相次ぎ、株主の「大戸屋愛」に経営陣が応え続けていけるのか、不透明感も垣間見えた。

 株主総会は東京都新宿区の「ハイアットリージェンシー東京」で午前10時から開催。10分ほど前になると降りしきる雨のなか、多くの株主が次々に会場内に入っていった。注目企業の株主総会とあって報道陣も多数詰めかけ、テレビカメラが会場前で出迎える社員や株主の姿を追いかける。「本日は誠にありがとうございます」。案内板を持った男性社員が来場者に緊張した面持ちで声をかけていた。

 株主総会の様子に入る前に、今回の問題の概要についておさらいしておこう。大戸屋HDは昨年7月に死去した三森久実・前会長が、実質的な創業者として1軒の大衆食堂を国内屈指の定食チェーンに育て上げた。食材や味付けにこだわったメニューやモダンな店舗がファンを獲得し、関東を中心に店舗網を拡大。近年では海外での事業展開にも注力する。2016年3月期の売上高は260億円、営業利益は6億円だ。

 発端は今年2月、久実氏の長男で同社取締役だった三森智仁氏が退任。5月20日に智仁氏と久実氏の妻の三枝子氏が、会社側が株主総会に提案する取締役の人事案への反対を表明した。2人は筆頭株主だった久実氏から株式を相続し、現在は同社の計18%超の株式を保有している。創業家が経営陣に表だって異議を唱えたことで、対立が表面化。株主総会は紛糾する可能性が高いとみられていた。

 さて、株主総会。午前10時になると、大戸屋HDの窪田健一社長が開会に先立ち、今回の問題についての会社側の見解を述べ始めた。かなり長くなるが、窪田社長の全発言を紹介しておく。

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