別の株主からは、経営ガバナンスへの懸念を表明する質問も出た。

株主
「社外取締役の割合について。現状の形態がどんな経営運営をしているのが理解できない。執行役を兼ねている2人(取締役の平井社長と吉田副社長のこと)と、社外取締役と、バランスが非常に悪い。例えば、経営機構の概要として、株主に対して、どんな経営責任を誰が担っているのかが分かりにくい」 

「例えば業務内容を変更しようとする意志決定を、どの人がどんな形でやるのか。それに対して、経営結果が、我々株主にどんな形で誰からフィードバックされるのか。あまりにも社外取締役が多いのは望ましくないのではないか。大きな組織の中で意志決定をするのが、2人だけでいいのでしょうか」

平井社長
「執行役が実際に、経営の現場を仕切ってリーダーシップを発揮して、決定を下してビジネスを毎日進める。それを株主に変わって監督する形で、間違いがあれば是正するのが取締役会の役割。取締役会では日々の経営のオペレーションや判断は執行役に任されている。監督するのは社外の方が多いが、間違った判断がないように監督する立場としては望ましい」

「執行側が大きい決定で取締役の承認をもらう場合、時に厳しい意見をいただいて、それを執行側と取締役側で議論をしながら、ソニーの経営にあたっている、という状況だ」

ガバナンス、モバイル、デバイス

 平井社長は、少し早口で回答を終える。ソニー社内取締役は平井社長と吉田副社長など3人のみ。今回選任された11人の取締役のうち、社外取締役は8人で、大多数を占める構成となっている。

 ソニーOBでCFOを務めた経験を持つ伊庭保氏などもここを問題視しており、技術系の社内取締役をもっと取締役会に入れるべきだと主張している(「だから私はソニーに提言書を送った」初代CFO・伊庭保が語る慟哭)。 社内取締役が少ない点や、技術に強い社内取締役がほぼいないなどと、ガバナンス関連はソニーOBからよく突っ込まれるトピックスであり、現経営陣が触れたくない内容なのかもしれない。

 平井社長が早口になったのは、「さっさとこの質問を終わらせたい」という焦りの表れだろうか。

 次はまた、ダイバーシティーに関する質問。人事担当の安部和志・執行役EVPが回答した。

株主
「ソニーの商品は若い人と女性の感性に訴えるものが多い。が、女性は執行役員にもいない。ソニーの女性従業員の数と管理職の比率、女性の戦力化をするプランを知りたい」

安部執行役
「ソニーでは性別に限らず多様性を競争力の源泉の1つとしている。特に女性活用は重要だと認識している。女性社員比率は17%。管理職に占める割合は約7%となっている」 

「エンジニアリングのバックグラウンドを持つ学生を含めた母数が、限られている中で、業界の中でも積極的に女性活用を推進していると認識している。4月から女性活用推進法も施行され、積極的に活用していきたい。執行役員は新たに女性が加わり、2人が活躍している。組織全体としてさらに多様性の推進に取り組んで行きたい」

平井社長
「多様性、ダイバーシティは当然、男女もそうだし、国籍や宗教といういろいろな多様性がある。これがやはり経営の重要なポイントとして捉えている。多様性をいかに生かすかが、ソニーの商品、サービスの差異化につながると認識している。社内ではダイバーシティを推進するプログラムがあり、私もそういった会合に参加し、トップマネジメントから、多様性をいかに重要視しているのか、常に社員に伝わるようにしたい」

 次の株主の質問では、まだ構造改革が続くモバイル事業と、稼ぎ頭となったものの足元では不調のデバイス事業についての懸念も指摘された。

株主
「モバイルとデバイス関連の事業について。共通するのが、大きな損失を計上し、構造改革が順調だと説明したが、本当にそうかなと思う。この分野は競争が激化している。構造改革は製造、開発の効率を上げて付加価値を高める方向だと思うが、一方で5000億円の営業利益を2017年度に実現するというのは非常に高い目標だ」

「この2つの事業が利益にどう貢献すると判断して継続を決めたのか。貢献が低いならば、これをあえて切って、異なる成長分野に挑戦していって、現状のリソースをそちらに回すことが経営効率の向上につながるのではないか」

吉田副社長
「モバイル事業は2015年度に大きな赤字となったが、まさに構造改革を進めるための赤字が入っている。今年度は規模を追わず、高付加価値商品に注力することで黒字化を目指す。2017年度についても、利益貢献はあると認識している」

「デバイス事業も、昨年度はバッテリーについて減損があり、赤字になった。今年度は熊本地震の影響で赤字の見通し。ただ長期的にデバイス分野、特にイメージセンサーについては利益貢献すると思っているし、2017年度の目標についても利益貢献すると認識している」 

平井社長
「これからスマホ以外にもさまざまな環境にある商品がインターネットにつながっていく。IoT化が進む中で、イメージセンサーについても、新しいセンサー技術が重要視されてくる。若干、地震の影響などで期待にお応えできない部分もあるが、デバイスビジネスは長いスパンで見ると、大きな利益貢献をしてくれる分野になると思っている」

 株主総会の開始から1時間15分程度が経過し、そろそろ潮時だと感じ始めたのだろうか、平井社長が、「質問はあと2人」と宣言する。