10時33分。いよいよ株主からの質問が始まる。平井社長は、メガネを外し、会場を見据える。「発言のある方いらっしゃいますか」と言いながら会場をぐるりと見回した。

 一つめの質問は、男性株主による、医療事業におけるオリンパスとの資本業務提携についてだった。吉田憲一郎副社長兼CFOが回答し、平井社長が補足した。

オリンパス提携、宣伝費、エクスぺリア

株主
「1つだけ確認したい。オリンパスとの協業で、4Kの内視鏡の事業化するということだが、有価証券報告書の中で、オリンパスの株の一部を売却するとあるが、一部というのは全体の何割なのか。これから医療関係とか、先々伸びると思うが、どうして投資の部分、せっかく投資したのに売却したのはなぜか」

吉田副社長
「オリンパスの株式については、約10%を保有していた。昨年その半分を売却した。とはいえオリンパスとの協業関係にはマイナスの影響はない」。

平井社長
「オリンパスとの協業と4K映像の内視鏡は、外科分野でかなり好評価をいただいており、オリンパスとソニーの技術が上手い形で融合したと高い評価を得ている。メディカルはさまざまなチャレンジをして新しい商品を出していきたい」。

 次は、女性株主からの質問で、宣伝広告費について。

株主
「当社は私の知る限りでは、日本で最も高額の宣伝広告費を使っていると聞いている。おそらく1年間で5000億円近いカネを使っている。トヨタよりも500億円近く多い。事業規模の割にどうなのか。高い広告費を使う必要があるのか」

「作っている製品は若者向け中心に売られている。今、若者はほとんど新聞を読まない。ほとんど彼らは紙媒体から情報を取らない。その人を対象にするなら、紙媒体、新聞に多額の広告費を使う必要はないのではないか」

「朝日新聞のように明らかに部数が落ちて、問題を起こしている。押し紙問題だ。朝日新聞なんかはそれを公称部数にしている。そういう、問題視されている新聞など、紙媒体に多額の広告費を出す必要はないのではないか。そうすればもっと利益が上がるのではないか」

吉田副社長
「2015年度の広告宣伝費は3913億円。大きな金額であると認識している。ただ、前年比で見ると1%の減少。内訳は、当社の映画、音楽、ゲーム事業といったエンタテインメント事業の広告宣伝費の割合が大きい」

「この三つの分野で6割以上を占めている。映画事業については、特に、広告宣伝が業績に影響することもあり、一定のコストがかかっている。デジタル媒体でも積極展開をしている」 

「エレクトロニクス分野はメリハリついた活動で削減しながらより効果を上げるよう進めている」

平井社長
「個々の映画のタイトルやゲームタイトル、もしくはエレクトロニクスの商品、サービスの広告宣伝、マーケティング活動は重要だと思っている。だが、同時にソニー自体のブランド、価値、みなさんにどういうブランドとして見てもらうかということは重要。近年、ブランド価値が下がっているのではないか、と指摘を受けることもある。なのでSONYのブランド価値を高める広告宣伝はしないといけないと思っている」

 株主の質問で朝日新聞の媒体名が出たあたりでは、報道陣が集まる視聴ルームで新聞記者を中心に、失笑が漏れた。

 平井社長、メガネをはずして会場をぐるりと見わたして、挙手している株主を当てる。どこのマイクが質問者から最も近いか、親切に案内する。それだけの余裕が出てきたようだ。男性株主からの質問は、 まだ構造改革の途上にあるモバイル事業への懸念だった。モバイル事業を担当する、十時裕樹執行役EVPが回答した。

株主
「ソニーのスマホ、『エクスペリア』は海外で持っている人はほとんどいない。スマホ自体が飽和状態になっていて、日本でも中国メーカーが増えている。そういう中で、エクスペリアを続けている。ブランド価値と相まって、どういうメッセージを消費者に発していくのか」。

十時執行役
「ソニーモバイルコミュニケーションズは商品の差異化が難しい普及帯製品ではなく、高付加価値製品を強化する戦略をとっている。売上高については減少しているが、高付加価値商品なので利益率はあがっている。エクスペリアのコアファンに新たな価値を提供する」 

「ソニーの技術力とデザイン力を生かし、カメラについても差異化したい。基本機能を強化するとともに、生活を快適にサポートする機能、インテリジェンスも加え、差異化が図れている」

平井社長
「スマホは大体、10年ちょっと前に市場に出てきた。ガラケーから置き換わり、コミュニケーションスタイルが変わってきた。将来も人と人のコミュニケーションをするニーズはある。スマホの次にどういう形でコミュニケーションをするのか。どういうデバイスが必要か、どういうビジネスモデルとなるのか。マネジメントで議論している」。

「スマホの次に来る世界を議論している。その時にソニーがリーダーシップを取っていきたいと考えている。将来のパラダイムシフトに向けて議論をしている」