大規模な変革の成功は、結局のところあなたの組織で働いている何千人もの社員が、どれだけキチンとしたパフォーマンスをあげてくれるかにかかっています。そのため、既にお話ししたとおり、変革を成功させる組織では、変革にあたってどのようなリーダーシップ行動が重要で、社員のやる気を引き出すにはどうすれば良いかを熟知しているリーダーを配置しています。

持続的で高い成果:リーダーの行動がカギ

 多くの組織やそのリーダー層は、プロジェクト実行のために社員に何をどのようにやってほしいかを伝えるために、いろいろな方法を巧みに使っています。多くの場合、社員は次のようなアクションをきっかけとして行動を起こします。

  1. ・コミュニケーション(電子メール、社内報、ポスター、タウンホール・ミーティングなど)
  2. ・一対一の打ち合わせ(あるテーマについての上司から部下への会話)
  3. ・研修での学び(研修参加者は、学んだ新しいスキルを職場で実行しようとするものです)
  4. ・上司との業績評価における話し合いの内容

 これらについて、職場での実例を思い起こすことは簡単でしょう。そして、企業はこれらに対して多額の投資をしています。ただし、より多くの人々にそれぞれの責任の仕事をよりよく実行してもらうためには、行動変革の観点から注目すべき別の側面があります。

 それは社員が、ある行動をとった後に、どのような経験をするのかについて明らかにすることです。皆さんが社員に、「このような行動をとってほしい、その理由は何か」を説明したとしましょう。それに加えて、どうすれば社員がやる気をもって必要な行動をし続け、行動を改善してくれるのかを、皆が理解する必要があります。

 私たちが自身の行動の後にどんな結果を得たか、つまりそれが励みとなる内容だったか、やる気を削ぐ内容だったかどうかが、その後の私たちの行動に大きく影響することが、行動科学の結果、明らかになっています。

 自身の行動から励みとなる結果を経験するたびに、私達は将来にわたって同様の行動を続けようとします。例えば、会社の会議である社員が新製品開発の新しいアイデアについて発言したとしましょう。それに対して上司が、「そのアイデアは素晴らしい。どうもありがとう」と言ったとすれば、その社員は将来にわたって自分のアイデアを発言することを続けるでしょう。

 ところが、上司に発言を無視されたり「会議で個人的な意見を発言しないこと」などと言われたりすると、今後この社員が会議の場で発言する見込みは薄くなってしまいます。つまりこの場合は、社員のやる気が削がれてしまったわけです。

 重要な行動の後に経験する事から、直属の部下達がどのような影響を受けるかを理解しているリーダーは、励ましを増やし、やる気を削ぐような要因を減らすことに気を配ります。このようなリーダーは人事部門などの助けなしでも、素晴らしい影響力を発揮することができるようになります。

 ところで、何が効果的かは社員一人ひとりで異なっています。例えば、みんなの前で賞賛されることがとても励みになるという社員がいる一方で、それが気恥ずかしく却ってやる気を削がれると感じる社員もいるはずです。あるいは上司との会食がとても励みになると感じる人がいる一方で、上司との一対一の会食は勘弁してほしいと感じる人もいるでしょう。

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