日独が先端技術の「国際標準化」や「研究開発」で協力する理由

 では、こうして進行しつつある第4次産業革命を巡り、国はどう動いているのでしょうか。日本とドイツの政府は2017年3月、IoTやAIなど先端技術の国際標準化や研究開発で協力することを柱とする「第4次産業革命に関する日独共同声明(ハノーバー宣言)」に調印しました。

 ドイツ政府は「インダストリー4.0(製造業のデジタル化・コンピュータ化を目指すコンセプト)」を提唱し、推進してきました。一方、米国では民間企業主導で「インダストリアル・インターネット」という言い方をしています。やろうとしていることはどちらも同じ。製造業のデジタル化によって21世紀の製造業の様相を根本的に変え、製造コストを大幅に削減する。

 ドイツも米国も同じことをやろうとしているのに、なぜ日本とドイツが手を組んだのか。あえて「インダストリー4.0」とか「第4次産業革命」と表現しているのは、情報化革命を先導してきた米国の単独勝利を許さないという意図の現れです。安倍首相もドイツのメルケル首相も、米国の勝利を最初から認めるようなことはせず、仕切り直そうとしたのです。

自動車生産台数が急減すれば、日独経済は成り立たない

 もう1つ、日独が組んだ理由は自動車産業をソフトランディングさせたい思惑が一致したからです。インダストリアル・インターネットという米国のやり方を進めると、自動車産業はクラッシュしてしまうと恐れているのです。

 世界中で稼働中の自動車台数の総数は、今後20年くらいで現在の50%くらいに激減すると見られています。BMWは既に2020年の自動車生産台数は現在の3割減と言い始めました。こうした変化が急激に来ると、自国経済の中における自動車産業の重みが大きい日本とドイツの経済は、成り立たなくなってしまう。

 米国のインダストリアル・インターネットが手強いのは、「消費者から製造業に攻め上がる」という作戦をとろうとしているからです。かつて、アルビン・トフラーが著書『第三の波』で「プロシューマー」とでも呼ぶべき人物像の登場を予想していました。コンシューマー(消費者)でありながらプロデューサー(生産者)でもあるような人物がプロシューマー。製品の企画・開発・製造にも携わる消費者ということです。

 そのものズバリの存在が第4次産業革命で登場するわけではないにせよ、消費者の嗜好がサプライチェーンの各所に影響を与えるようになりますから、「サプライチェーン」を「デマンドチェーン」と読み替える発想が必要になります。消費者の意向をつかむことに力を持つシリコンバレーの企業が本気で力を発揮してくれば、日独にとっては脅威です。