「デジタル端末と人間の神経系統との結合の研究が加速していく」

脳にセンサーを埋め込み、兵器を動かす?

 2014年、ブラジルで開催されたサッカーワールドカップでは、下半身不随で歩行できない女性が初戦のキックオフを行うことが予告されていました。この女性は事故で脊椎を損傷したため、脳からの指令が足に伝わりません。しかし、脳波を測定するヘルメットを装着することで、「立ち上がりたい」「右足を蹴り出したい」という脳の意思を脳波を解析することで読み取り、それを両足に装着した外骨格と呼ばれるロボットの足のような機械に伝え、足を動かそうとしたのです。

 結局、この時には実現しなかったのですが、既に3年前にはこうした取り組みを検討するぐらい技術は進んでいました。

 こうした脳神経系統と機械・コンピューターとの結合は「ブレーン・マシン・インターンフェース(Brain Machine Interface)」の略でBMIとか、「ブレーン・マシン・マッスル・インターフェース(Brain Machine Muscle Interface)」の略でBMMIなどと呼ばれ、研究が進んでいます。間に挟む機器は「ファンクショナル・エレクトリカル・スティミュレーション(Functional Electrical Stimulation)」の略でFES。実は、これらの機器には双方向性が必要となります。

 我々健常者は意識していませんが、筋肉を動かすには触覚が重要です。例えば、モノをつかむ時には、指先にどれぐらいの圧力をかければつかめるかという触圧を脳にフィードバックしながらつかみます。固さ、重さなどによって手加減を調整します。強すぎてもいけないし、弱すぎてもうまくいきません。こうした双方向性を持つ「ブレーン・マシーン・ブレーン・インターフェース(Brain Machine Brain Interface)」の開発はサイボーグの実現につながります。

 神経系統と機械やコンピューターとを結合させる上で、医師は電極などを直接脳に接触させない「非侵襲性」を維持したいと考えます。けれどエンジニアは「侵襲性」のある方法の方が確実に脳波を計測できると主張します。メルボルン大学のバイオニック研究所では、血管を通してセンサーを脳に埋め込み、脳神経から直接電気信号を感知しようとする研究が進んでいます。

 実はこの研究は米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が資金提供しています。同盟国とはいえ、なぜ米国が自分たちの研究予算をオーストラリアの大学にまで配っているのか。この研究が進めば、人間のサイボーグ化が進み、脳波で兵器を動かすこともできます。外骨格はガンダムのモビルスーツのように健常な兵士の能力向上にもつながります。米国はスマート義手・義足による傷病兵の機能回復のほか、能力の高いサイボーグ兵士の開発も視野に入れているのかもしれません。この分野の米国防総省の動きには注目していくべきです。