新日鉄と住友金属の統合について

受講者:新日鉄住金は2012年、新日本製鉄と住友金属工業が統合して誕生しました。企業風土も異なり、それぞれの会社には様々な考えの人がいたと思いますが、2社をつなげる「ビジョン」のようなものはあったのでしょうか。

佐久間:はい。「Best for the New Company」の精神で統合を進めていました。合併に関する資料には、必ずこの言葉を、最初に入れていました。

 ご存じの通り、もともと新日鉄も、旧八幡製鉄と旧富士製鉄が合併してできた会社です。八幡と富士の合併に関してはものすごい苦労をしています。その苦い経験があるため、住友金属と一緒になろうという時には、とにかく最初から「Best for the New Company」を浸透させることを意識しました。その結果、非常にうまくいったと思います。統合後の経営も、順調に進んでいると思います。我々の負の経験が生きたのではないでしょうか。

鉄以外の異分野での研究開発について

受講者:過去には、本業以外の多角化を進めた時期もあるというお話を、さきほどしていただきました。紆余曲折を経て、鉄に回帰されたという結論でしたが、現時点で、鉄以外の異分野での研究開発に取り組むお考えはありますか。

佐久間:基本的には、鉄のための研究に特化しようと考えています。ただ結果として、鉄の研究の延長線上で、異分野の研究──例えば、生物に関係する研究開発をするといったことはあります。生物の研究の一環では、藻場(もば、様々な海草・海藻の群落)の再生に関わっています。

 近年、海中の海藻類が消失し、魚介類の生息場が失われていることが、新たな環境問題になっています。鉄分の不足が「磯焼け(藻場や海藻が死滅する現象)」の原因になることがわかってきたため、製鉄プロセスの副産物として生成する「鉄鋼スラグ」を活用した製品を、海に沈めて藻場を回復させようとしています。

 少々変わったところでは、農業や林業、鉄道などの分野に関するもので、シカ(鹿)被害の低減を目的とした「ユクリッド」システムという商品も開発・販売しています。日本では、シカと列車の衝突事故が、年に5000件ほど起きています。実際に観察してみると、シカは鉄分補給のために、鉄道のレールを舐めに来ていることが分かったのです。逃げ遅れて、列車と衝突してしまうんですね。そこで、入りにくく出やすい鉄製フェンス「ユカエル」と、その外側に塩と鉄分を混ぜた誘鹿材「ユクル」を配置し、シカがレール敷地に入らなくても満足して帰る(カエル)というシステム商品をつくり、トラブルを防いでいます。「ユク」はアイヌ語でシカを意味しますが、このシステムはよく売れています。

 そのほか微生物を使った水処理、窒素除去などの研究もしています。

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