「鉄を活かすことは、地球上に存在する人類にとってみれば必然。今後、世界がどう変わろうとも、鉄ビジネスは不滅です」
「鉄を活かすことは、地球上に存在する人類にとってみれば必然。今後、世界がどう変わろうとも、鉄ビジネスは不滅です」

鉄鋼業は注文生産

 ではその鉄ビジネス、鉄鋼業の現状について説明していきましょう。

 鉄は地球に豊富にあると言いましたが、鉄鉱石の形で存在するそれらは全て酸化鉄です。この鉄鉱石を純鉄に近いものとし、いろいろな形にするのが鉄鋼業です。

 鉄鋼のプロセスで重要なのは、鉄鉱石と、原料炭という特別な石炭を蒸焼きにしたコークスを高温下で反応させること。酸化鉄の酸素と炭素が結び付き、一酸化炭素や二酸化炭素が出て鉄が残ります。この鉄をいろいろな形に仕上げていくわけです。

 鉄鋼業(高炉業)はBtoBで、ほぼ全量注文生産。マス・カスタマイゼーション(個別仕様の製品を大量につくる業態)です。ドロドロとした溶けた鋼状態の時には既に、どの自動車メーカーのどの車種のどの部分になるのか、もしくは、どの電機メーカーのどの商品に使われるのかが決まっています。

 今説明したような、鉄鉱石を原料炭により還元する作り方は「高炉法」と呼ばれます。他に、鉄スクラップを主原料として、電気炉でつくる「電炉法」もあります。コンパクトな分、世界中に電炉は多く存在しますが、日本ではその生産量は2割程度です。

もはや日本に新たな製鉄所はつくれない

 高炉法はとにかく、工場建設に費用がかかるのが特徴です。まず製鉄所をつくるには、広大な敷地が必要です。実際、当社の君津製鉄所は千代田区より少し広いぐらいの面積があります。使用エネルギー量も膨大です。君津製鉄所では日本全体が消費するエネルギーの1%を使っています。

 さらに、圧延という固い鉄を一気に引き延ばす工程で、大量の電気を使います。そのため、鉄鋼メーカーは自前の発電所を有しています。当社が持つ発電所を全部足すと、下位の電力会社を上回る発電量になります。

 鉄鉱石などの原料は100%海外から輸入しています。受け入れには港が必要です。しかも大型船で持って来るので、水深20メートルを確保しなくてはなりません。当社が受け入れている40万トン級の大型の鉄鉱石運搬船「ヴァーレマックス」は、水深23メートルが必要。対応できるのが大分製鉄所です。一度、そこで鉄鉱石を降ろし、少し喫水を上げて他の港に入るということもやっています。

 さらに製鉄の過程では大量の水も必要なので、自前の貯水池ダムも持っています。製鉄所の人員は1万人ぐらいに及びます。彼らが生活するための様々なインフラも必要です。

 つまり、製鉄所は何から何まで実に大がかりなインフラを用意しなくてはなりません。今からつくろうとしても土地も十分にはないし、環境問題への対応も難しい。もはや日本で新たに製鉄所を建設することは不可能でしょう。アジアを見ても、タイなどでは適当な土地がない、水深が足りないといった理由でつくることは難しくなっています。

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