「下に落ちていて誰も見ないもの」を狙う

受講者:人材は3回転半したということでしたが、一方で、大幸薬品の経営トップは4代続けて柴田家の方というのも特徴的かと思います。いま、株式市場では信念を持ち、将来を見据えてやっていけるファミリー企業の方が株価のパフォーマンスが良く、市場の評価も高い面がありますが、そういう中で経営トップの引き継ぎに関してどういうお考えを持っているのか聞かせていただければと思います。

柴田:ファミリー企業の経営トップといっても、創業家という担がれる神輿に乗るだけの場合もあるし、リーダーシップを持って勝負していく場合もある。いろいろなタイプがあると思います。

 今、大事なのは、Evidence Based Marketingを実践し、世界中に市場をつくっていくことだと思っています。いろんな会社とご縁をいただき、プラットフォームをつくっていくこと。後継者が誰であれ、チーム一丸を実行できるリーダーシップを演じることだと思います。

受講者:将来的に正露丸がアニサキスに効くという薬事承認などの方向を目指すことは考えていますか。

柴田:素晴らしいご質問です。私はまさに、医療用から一般用医薬品に転用される「スイッチOTC」の逆版、「逆スイッチOTC」にしたいんです。本当はね。専門家に聞くと、「過去にそんなことは聞いたことがない」とか「それは大変なコストと時間がかかる」と言われますが。

 今後、臨床治験をやって認められれば、「生魚を食べた時の食あたり」などの効能を取れる可能性はあります。医者に行くまでの予防市場が広がり得る。その辺りは狙っています。

受講者:大幸薬品の未来についてお聞きします。会社の成長、理念の遂行については、今、販売している正露丸とクレベリンで追求していくのか。それとも第3のプロダクトを考えていくのか。考えを聞かせてください。

柴田:新薬の開発というのは非常に難しいものです。最終段階で別の作用が出て薬にならないということが多々あります。そういう別の作用がないということを確認するだけでも何百億円もかかります。

 大手ではない我々はそういうところを狙うのではなく、下に落ちていて誰も見ないものを狙いたい。正露丸もクレベリンもそういう製品です。正露丸は「あんな薬はもうなくなるだろう」と思われていた時代もあります。二酸化塩素が最初に出たのは1811年にさかのぼります。見向きもされていなかったのです。

 けれど、今の時代に合う切り口できちんとエビデンスをとり、論文化すると、世に広がっていくのです。まあ、昔の歌謡曲もヒットしますからね。それと同じです。こういうマーケットが、我々のようなメーカーには狙い所だと考えています。

 我々の強みはエビデンスを論文化することによって、価値のないものに価値を与えるということ。今、顧問を務めてくださっている緒方規男先生の後継者も育てています。このやり方が大幸薬品の特色であり、ひとつのブランド戦略だと考えているので、今後も続けていきたいと思います。