IPOは会社の受験、変化せずに済む社員はいない

受講者:私はIRの仕事をしていて投資家の対応をしていますが、IPOを果たすことは、経営上での制約条件を増やすことになるように感じています。ただ、柴田社長がおっしゃるように、外部の審査を受けるプロセスの中で組織が変わるというのはメリットなのだろうと思います。大幸薬品ではIPOによってどんな変化があったのかを改めてお聞きできればと思います。

柴田:IPOは簡単にいうと会社の受験です。社員全員が一丸となって受験しないといけない。「今のままでいい」「何も変化しなくていい」という社員はいなくなります。「根が生えている人も、とにかく1回立ちましょう」というアクションを起こすことになる。これによって、人の入れ替えがどんどん起こります。

 幹部には「上場すればこれだけのものが入りますよ」とニンジンをぶら下げました。上場後には早期退職制度を導入し、チームを作り直すというプロセスを踏みました。組織改革の手術は致し方ないと思います。実際、私が大幸薬品に入った時の組織と今の組織では全くちがいます。トリプルアクセルですよ。3回転半ぐらいしている。製造部門とかコアなところは、同じ方がおられますけど、それぐらい人が流動化しました。

受講者:人材の流動化が進んだというお話でしたが、組織マネジメントに関して柴田社長自ら課題を認識して何か変えた点などはあったのでしょうか。

柴田:それはまさしく一番私が苦手なところです。「みんなが機嫌よく仕事をしていたらいい」「幸せそうにしていたらいい」という本音があるので。その組織が滝つぼの方に向かっているとしても、なかなか気付くことができない。

 人材が流動化したのは、経営者としてミッションを掲げているうちに、自分のパフォーマンスと企業として目指すところに乖離があると気づいて、おのずと違うプラットフォームに行くことにした社員がいたからです。退職の相談は全部のるようにしています。「そうかそうか、せっかく今まで一緒に仕事したんだからいい会社に行けたらいいね」「また一緒に組もうな」という具合です。

 「こういう組織にしたいから、この人には出て行ってもらって、この人を入れよう」というのはやっていません。