12年単位の「ステージ」に分けて考える

受講者:下野さんは48歳で取締役になられています。大企業の役員になる年齢としては、非常に若いですね。それを踏まえて、我々受講者に「若い頃にはこれをやっておくといい」というようなアドバイスがあればぜひ教えてください。

下野:私は24歳で会社に入り、60歳で定年退職するつもりでした。結局、63歳の今もまだ会社にいますけれど。24歳から60歳までで36年間。干支でいうと3周です。私はその36年を「ステージ1」「ステージ2」「ステージ3」と呼んで、干支と同じ12年単位で整理して若い社員にアドバイスをしています。

 ステージ1では、「どうしたらライバルに勝てるか」とか、「どうしたらお客さんの決済がスムーズに進むか」といった学校や会社の研修では教えてくれない実践スキルをハンズオンで自然と身につけました。IT業界で生きていくためのファンダメンタルズ(基礎)を実地訓練で学びました。

 この自分の経験から思うのは、ステージ1では1つの仕事をやり尽くした方がいいですよということです。あまりちょこちょこ変わらずに。最初に配属された組織には、陽の当たる部門とそうでない部門とがあるでしょうが、まずはひとつの部署で頑張って信頼される社員になることです。その会社におけるビジネスプラクティスとか、ビジネスのファンダメンタルズをしっかり身につけるべき時期だと思います。

 ステージ2はビジネスパーソンとして一番成長する時です。私の場合、非常にラッキーなことにその最初の2年半、米国本社に行かせてもらいました。帰国後は新規事業の担当になりました。新規事業というと聞こえはいいけど、すぐには儲からない分野です。当時、会社の中ではどちらかといえば傍流の部門でした。他の本流の部門への異動をお願いしようかと思いましたが、米国から帰ってきたばかりでしたし、ちょっと我慢してやってみるかと思い直しました。そうしたら、3年目か4年目に新規事業が立ち上がって、数十億円しかなかったビジネスのサイズが、数年後には百億円以上まで拡大しました。それで波に乗って、その後はメーンストリームのビジネスを含め、いろいろな経験をさせてもらいました。結果的に様々な視点で物事を見られるようになりました。新規事業で悪戦苦闘したことで人の確保、活用の仕方なども大いに勉強になりました。

 ステージ3は組織の長として人と業績のマネジメントを担当しました。最後の12年間の過ごし方は人それぞれだと思いますよ。みんながみんな経営者になれるわけではないので、ある分野のエキスパートとして突き抜けるのも1つの方法だし、仕事中心の生活だけではなく定年後へのスムーズな移行を考えてステージ3を過ごすというのも1つの生き方です。

 以上をまとめると、最初の12年は歯を食いしばって、与えられた仕事に不平を言わずに1つのことをやり遂げる。

 でも、次の12年は少しわがままを言ってでも、いろいろなことを経験する。

 最後の12年は、人それぞれの価値観で人生を決めていく。

 私からアドバイスできるとしたら、そんなことかな、と思います。(了)

「ビジネスキャリアの最後のステージは、人それぞれの価値観で決めていく」(写真:gajus / 123RF)