「どこかで1回、ディスラプティブな、非連続な変革をしないと、企業は変われません」

カッチリした文化と、自由闊達な文化をどう融合するか

受講者:僕にとってIBMはある種の憧れを持って見ていた会社でした。ところがある時……もうかなり前の話になりますが、突然大赤字を出し、外部からルイス・ガースナーさんというCEOがやってきて大改革に着手した。
 驚きましたが、非常に理にかなったM&Aを実行し、その後も素晴らしい会社として存在感を放ってきたと思います。
 それでも今、苦しんでいる部分はある。今年に入ってウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、保有しているIBM株のうち約3分の1を売却しました。下野さんはIBMの将来をどう見ていらっしゃいますか。どういう方向に進むのか、課題は何かなど意見を聞かせてください。

下野:IBMの研究部門の本部であるワトソン研究所からは人工知能のテクノロジーに代表されるような、すごいものが出てきています。我々には技術でリーダーシップを取れる領域がある。それは非常に強みです。最近ではよく量子コンピューターの話が出てきますね。量子コンピューターに関しては、IBMがリーダー的企業の一つです。

 ただ自社内の研究所に投資して産み出されるテクノロジーだけではもう今の競争環境で生き残れません。ビジネス・ニーズに直結した新しいソリューションやソフトウエア、サービスが重要です。そういうサービスやソリューションはマーケットにしかない。そうなるとマーケットでそういう新しい力をM&Aし、統合プロセス「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」をスムーズにやることが必要になりますね。

 実際、IBMはオペレーションに優れた会社だからぱっぱっとやるんです。でもそうすると、やはり文化とか商習慣とか社風とかの違いから、M&Aした会社のお客様や社員から反発が起きることもあります。

 IBMは、その100年の歴史の中で、素晴らしいお客様と優秀な社員が最大の財産です。ただ、例えばグーグルやLINEを引っ張っている人たちは資質や考え方は違うんじゃないかと思います。これから新しいITのサービスやソリューションを提供するベンチャー的な人たちは、IBMのようなカッチリした仕組みでなく、もっと緩やかな文化で育てられるのだと思います。

 IBMのようなしっかり、かっちりした会社に緩やかなものを合わせると、そこで融合がなかなか進まないのではないかというのが私の今の懸念です。キッチリとしたオペレーショナルエクセレンスが活きる世界と自由な、しかしちょっとルーズな世界。それをどう融合させるかが課題だと見ています。