「収益の源泉は『セールス』から『ポストセールス』にシフトすべきです。『製品ビジネス』から『サービスビジネス』へのシフトと言ってもいい」(写真:陶山勉)

女性活用は「できる」という自信をつけることが重要

 最後に日本IBMがダイバーシティーに、いかに対応しているかの一端をご紹介します。

 「金太郎あめ」のように均質な人間が集まる組織と、性格や考え方などが多様な人材が集まる組織なら、前者の方がコンフォータブルなのは間違いありません。けれど、そのコンフォータブルゾーンに入り込んでしまったために、ダメになった企業事例は山のようにあります。日本IBMは多様な考えを持つ、多様な人材がいる会社をつくることが、重要だと考えています。

 まず女性の活用について。消費財メーカーなどと違い、女性を活用したから組織が活性化するということはあまり感じません。ただ、なんといっても優れた才能を集める上で、女性の活用は不可欠です。世の中の才能の半分は女性にあるのですから、組織全体の能力値の平均を高くするという点で、女性活用の意味は大きい。本来は男女半々にしたいところですが、残念ながらIBMの場合は理系を多く採用します。“リケジョ(理系の女性)”はまだ日本ではそれほど多くはいないので、結果的に男性6割、女性4割という比率に収まっています。執行役員の中では15%ぐらいが女性です。

 女性活用で一番のネックは、従来の男性中心社会の影響もあって、女性がなかなかコンフィデンス(自信)を持てないこと。「男性の部下に囲まれてこんなに難しい仕事をするのは、私には無理です」という具合です。この課題を解決するには、主任や課長ぐらいの段階で、女性が自信を持って仕事をできる場を男性側がつくることが必要。男性に負けず、「自分にもできる」というコンフィデンスを与えるには、非常にレトリカルですが男性側が変わることが必要です。

 いろいろあるダイバーシティーの中で、組織に刺激を与える存在としては外国人が一番強力です。今、日本IBMのオフィスには欧米人のトップ層だけでなく20代、30代のインド人や中国人を含む外国人が多数います。彼らと一緒に仕事をすることになってわかったのは、職場がユニバーサルになっていないということ。例えば、日本IBMでも全社員が使う必要のある情報システムは、ほとんどが日本語オンリーで外国人は使えませんでした。そのほかにも社員食堂のメニューが日本人向けだったり、伝票類を入れるトレーが漢字表記だったりと、外国人社員にとっては過ごしにくい仕組みが、たくさん残っていることを痛感しました。一つひとつ是正しているところです。

 次は性的マイノリティー、LGBTです。私は個人的に男性同士の結婚式に主賓として出席したこともありますが、会社としてLGBTへ正しく対応するのは単純なことではありません。難しいと思う最大の理由は、当事者が見えない、特定できないことです。LGBTは人口の7%いると言われています。日本IBMグループの従業員規模からして、千人以上いても不思議ではありませんが、誰が該当するのかはわかりません。中には「自分はLです」「自分はGです」とオープンにしている方もいます。ただカムアウトしている人たちも多様であって、社内のLGBT社員の全体像がなかなか見えてきません。会社にオープンにしてくれている社員の声を聞きながら会社としてはいろいろと熟慮して対応をしているつもりですが、LGBTへの対応はまだまだ手探りです。

 その他、高齢者、障害者などの方々につきましても、それぞれの方々の立場を深く考えた対応が必要なのはいうまでもありません。「ダイバーシティー」と我々は一言で括ってしまいますが、実際は非常に多面的なものです。それぞれの組織において、「今、解決しなくてはならないダイバーシティーの課題は何なのか」を明確にした上で、一つひとつ取り組むことが必要だと思っています。