プラットフォーマーは“国家”のように振る舞う

 今、産業構造は大きな変化を遂げています。例えば、その中の1つは、「ハードウエアのコモディティー化」。特にIT業界では激烈です。パソコンは中国で部品を集めてアセンブル(組立)すれば出来上がります。パソコンのハードウエアとOS(オペレーティング・システム)のレベルでは差別化がほとんどできません。ハードウエアのコモディティー化は製造業の世の中を大きく変えていると思います。

 「インターネットの登場と、プラットフォーマー(基盤の提供者)の台頭」も大きな変化です。ある人が「プラットフォーマーは“国家”のように振る舞う」と言っていましたが、本当にその通りだと思います。「徴税権」と「立法権」をもっているかのようです。

 新しいテクノロジーの登場で、世の中全体に起きているトレンドが「モノからコト」。IBMのビジネスにも大きく影響しています。顧客が求めているのはハードウエアそのものではなくて、ハードウエアを使って行う生産管理や人事業務などの機能であり結果です。

 こうした産業構造の変化に伴い、顧客の購買活動も変化しています。「所有」から「利用」へ、「買う」から「使う」へとトレンドが移行しつつあるのです。例えば、1日1時間、自動車を運転するとしたら、稼働率はわずか約4%ですから、所有の意義が問われるのも当然のことかもしれません。ある本を読んで思わずメモしたのが「ドリルを買った人が欲しかったのは、ドリルでなく穴である」という言葉。確かにその通りですよね。

ドリルを買った人が欲しかったのは、ドリルではなく「穴」。(写真:350jb / 123RF)

「製品ビジネス」から「サービスビジネス」へ

 「所有」から「利用」へ、「買う」から「使う」へ、と購買トレンドが移行するのなら、企業のビジネスモデルもそれに合わせて変えなくてはいけません。具体的にいえば、収益の源泉は「セールス」から「ポストセールス」にシフトすべきです。「製品ビジネス」から「サービスビジネス」へのシフトと言ってもいいかもしれません。

 製品ビジネスというのは従来のように、「高機能なDVDレコーダーを2年がかりで企画・開発し販売する」というようなモデル。しかし、競合に差をつけるための機能をてんこ盛りに盛り込んでも、実際にはマニュアルを見て複雑な操作をするユーザーはほとんどいません。平均的なユーザーが使う機能は全体の2割以下かもしれません。

 一方のサービスビジネスは「基本機能だけを搭載したレコーダーを生産・販売し、インターネットにつないで欲しい機能をその都度リクエストしてもらって、メーカーはそれを提供しダウンロードしてもらう」といったモデル。使ってもらいながら、ビジネスを回していくスタイルです。

 製品ビジネスでは企業が価値を開発・生産し、購入する顧客が価値を使用します。非常に長いバリューチェーンで動きます。これに対してサービスビジネスでは、企業と顧客が価値を共創します。短いバリューチェーンで動くことになります。

 IBMも、大規模システムは、要件定義、外部設計、内部設計、システム開発、単体テスト、システムテスト、本番への全面テストなどのプロセスをたどり2年ぐらいかけて開発しています。これからはちょっと作って、まず動かしてみることを繰り返し、気が付くとそれなりのものができているという開発スタイルが増えてくると思います。コンピューター用語で「アジャイル(迅速、俊敏)」という開発手法です。これからは、ありとあらゆる製品がこういう方向にシフトしていくと思います。