米国人は「アーキテクチャー」志向、日本人は「インプリ」志向

 ビジネスシーンを離れて、そもそも「日本人」と「米国人」とお付き合いしていると、根本的な違いを感じることがあります。米国人はとにかくストラテジーとかコンセプトとかビジョンなどを作り上げることに、やたらと時間を使う。「SWOT分析(マトリックス図を用いて、外部環境や内部環境を要因分析する手法)」で強み、弱みを把握しようとするとか、抽象的な議論をしたがるのです。構想(アーキテクチャー)志向といえると思います。一方、日本人はこういう大きなテーマの議論は苦手で、すぐに飽きてしまいます。実装(インプリ)志向です。

 クルマを見ると、日本人と米国人のそういう志向が顕著に現れていると感じます。例えば米国のクルマは遠目で見るとかっこいい。ドイツ車もそうです。それに比較すると日本のクルマはあまりかっこよくないかもしれない。けれど日本車は細部をきっちり作り込んであります。

 住宅も典型的だと思います。米国の家は遠目で見ると素晴らしい。けれど、どうも中のつくりは荒っぽいですね。ドアの閉まりが良くなかったり、部材が安っぽかったりします。日本の家の場合、見た目は大したことがないけれど、中のつくりはすごくいい。

 街並みもそう。パリの街なんて本当に美しいですね。凱旋門が真ん中にあって街路がきれいにデザインされ、建物も高さがそろっている。街全体のアーキテクチャーを考えた人はすごいと思います。それと比較すると日本の街の景観はグチャグチャ。でも、個々の建物のクオリティーは、たぶん日本の方がずっと高いでしょう。

30代から経営者をやる欧米、50代で初めて経営者になる日本

 システムの話で言うと、まずは全体のアーキテクチャーを決めて個別のシステムをデザイン、構築するという手法があります。「エンタープライズ・アーキテキチャー」がその一例です。でも日本人はそうやって全体設計をするよりも、すぐに細部を緻密に作り込もうとします。アーキテクチャー志向とインプリ志向の違いというのは、いろんな場面で目につきます。

 この話とも関連することですが、米国のビジネスパーソンは早い段階から先を見通してキャリア形成を考えています。優秀な人材は3年ぐらいで職務グレードやポジションを上げてやらないとすぐに辞めてしまいます。だから、35歳ぐらいでそこそこ偉くなってディレクターぐらいに到達します。30代後半からは完全に経営層に入ってきます。日産自動車のカルロス・ゴーン会長はその代表例でしょう。

 一方、日本のビジネスパーソンは目の前にある仕事に集中し、それをしっかり成し遂げようとします。会社によりますが、経営人材の最終的なスクリーニングは部長に就いた辺りから。50歳を過ぎてから執行役員に任命されるというようなケースがほとんどです。

 30代から経営者をやっている欧米のエリートと、50代で初めて経営者になる日本のエリートとでは経営スキルに大きな差が出るのではないかと感じています。どちらがいいかは私にはわかりません。けれど、これからグローバル化が一層進行していくことを考えると、日本でもそういう経営のエキスパートを若い頃から育てるようにしていかないと、グローバル競争に打ち勝つことができないのではないかと危惧しています。