日本企業は人に仕事をつける、外資系は仕事に人をつける

 私が入社した頃のIBMは、大型コンピュータービジネスが事業のほとんど。もちろん会社の形態は国際企業でしたが、現場の社員からみればグローバルなオペレーションはほぼ必要なく、国ごとにオペレーションをしていました。

 けれども、今はクラウドの時代。ネットワーク上で全体をマネージするわけですから、世界中の事業活動が一体としてオペレーションされなければなりません。グローバルのマトリックス経営(地域×事業分野)を遂行せざるを得ないのです。

 日本IBMがマトリックス経営に徐々に転換したのは今から20年ぐらい前のこと。以後、会社は劇的に変わりました。それまで「日本的な外資系企業」と言われていた日本IBMが、いわば外資系らしいグローバル企業になったのです。

 私なりに日本企業と外資系企業の違いをまとめてみます。既に指摘され尽くした話ではありますが、日本企業は人に仕事をつけます。メンバーシップ型の雇用といえます。社員からすると「就社」。「その会社のメンバーになること」がまず重要で、中に入って何をするのかは二の次です。企業側も大学の教育にはあまり期待はしておらず、入社した後にローテーションしながら人を育てていきます。

 一方、外資系企業の場合は文字通り「就職」です。日本企業とは逆で仕事に人をつけます。ポジションに合うスキルを持った人を雇う。ジョブ型の雇用です。

日本企業と外資系とでは経営者の育ち方が違う

 こういう雇用形態のため、日本のビジネスパーソンはゼネラリストが多く、米国はスペシャリストが多くなります。中には、経営のスペシャリストもいます。

 細かなことですが上司の呼び方も違います。日本の場合、「社長」「部長」と役職を呼びますが、外資系企業では相手がCEO(最高経営責任者)でも「ジム」「メアリー」と名前を呼びます。ただし外資系企業の社員も実は私たちが想像する以上に、心の中では役職のことを気にしています。「自分はまだディレクターだけど、彼はバイス・プレジデント(VP)だ。早くVPになりたい」といった具合に。

 表面的には名前だけで呼んでいるのでフラットな組織運営に見えます。これによって職場の雰囲気はかなり和らぎます。会議などではその違いが顕著に出ます。外資系企業は会議室に早く来た人から適当に座っていきますが、日本企業では座る場所が決まっています。名札が置いてあって、“偉い順番”で座るような形になっているところも多いですね。

 ある日本企業で午餐会(ごさんかい)に参加したことがあるのですが、開始時間を10分過ぎても社長と会長が来ない。そうしたら、誰ひとり、目の前に用意されたお弁当を食べようとしませんでした。これはIBMでは考えられない。IBMではみんなドンドン食べ、社長が遅れて入ってきたら「あ、もう食べちゃいました」となるでしょうね。日本には儒教的な文化が背景にあるためか、ずいぶん振る舞いはちがいますね。