エビデンスで空間除菌市場を再構築中

 こうしてクレベリンはエビデンスによって空間除菌という新しいマーケットを開拓しました。イノベーションを実現するためには「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という難所を越えなくてはならないと言われます。クレベリンは魔の川を越え、製品が普及していきました。しかしその後、危機に直面します。

 空間除菌市場には何の規制もなく、参入も容易でした。中には粗悪品を売るメーカーもあり、ユーザーがやけどを負う事故が起きてしまったケースがありました。二酸化塩素を利用した空間除菌をうたう製品を販売していた17社は消費者庁から「根拠不十分」と指摘され、広告表示を改める行政指導を受けました。我々も真摯に受け止め、環境によって効果が違うことを書き加えるなど、誤解のない表記に改めました。

2011年には二酸化塩素製品の正しい普及と品質向上のために大幸薬品などが発起人となって日本二酸化塩素工業会を設立し、私が初代会長に就任しました。厚生労働省の化学物質安全課、そして消費者庁や国民生活センターと意見交換しながら、安全性の規格を作成しました。人が一生吸い続けても健康への影響がない濃度として、室内濃度指針値を0.01ppmに設定。この0.01ppmで実験すると、細菌やウイルスは2~3時間で99%除去できることが分かりました。

 実空間でのデータも必要と考え、マンションでの実験も行いました。クレベリンゲル60gを6畳、150gを12畳のスペースに置いて測定すると、空間中のウイルス・菌がほとんど消えました。クレベリンを置くことでいわゆる簡易無菌室をつくることができるわけです。

 このように、大幸薬品はクレベリンに関してもエビデンスを取ることに力を注ぎつつ、市場の再構築に努めてきました。今やクレベリンは正露丸を上回る売り上げを獲得しています。