企業文化一新のために上場を決意

 大幸薬品に入社後間もなく、私は「上場を目指す」という意思決定を行いました。大幸薬品のような老舗企業はガラパゴスのようで良い面もあります。一方で当然、弊害もあります。当時、正露丸の売り上げは下がりつつありました。創造的破壊によって企業文化を一新しなければ未来は拓けないと思いました。

 企業における構造改革を考える時、私はガン細胞が頭に思い浮かびます。例えば肝臓ガンの画像を見ると、いろいろなガンが密集してモザイク構造を形成し、細胞分裂の早い方が、遅い方から置き換わっていることがわかります。

 このようにガン細胞は分裂して仲間を創造し続け、組織を破壊していきます。企業を構造的に改革するには、ガン細胞の創造的破壊のように仲間をつくりながら組織文化を破壊し、文化を変えるしかないのではないかと私は思います。

 こうして創造的破壊によって大幸薬品の文化を変えようと思った時、思い出したのが、私が指揮した市立豊中病院での組織改革です。豊中病院では外部の第三者のチェックを受けようと日本医療機能評価機構から病院機能評価を受けました。それが、顧客満足度の向上や経営改善に大いに役立ったという実感がありました。

 企業が同じように外部のチェックを受けようとするならば、上場が必要だと考えました。上場という“試験”を受けるには、受験勉強をしなくてはいけません。受験勉強をするには、自分に今、何が足りないのか、何を学ぶべきなのかを把握することが必要です。私はそういうプロセスをフックにして、組織を改革しようと考えたのです。

 改めて企業理念を策定し、会社が進むべき方向性を示しました。掲げたのは「自立」「共生」「創造」。この3つの理念で「世界のお客様に健康という大きな幸せを提供する」というゴールを示しました。

 上場に向け、友人の紹介でヘッドハンティングしたのがサイバードの副社長だった吉川友貞CFO(最高財務責任者)です。彼はサイバードの上場担当としてジャスダック史上最短上場に寄与したプロ中のプロです。私が1対1でずっと口説き続け、3、4年越しで入ってきてくれました。

 彼が入って1年後の2009年、大幸薬品は東京証券取引所第2部に上場を果たすことができました。2010年には東証第1部指定銘柄となりました。新型インフルエンザが流行し、空間除菌製品の「クレベリン」の売り上げが拡大して業績が急激に良くなった時、株価は当初価格の6~7倍にまで上昇しました。