柴田高・代表取締役社長CEO

エビデンスで風評被害を押さえ込んだ

 かつて、正露丸は『買ってはいけない』という本に取り上げられるなど、「ガンの発症リスクを高める」という誤解が広がった時期があります。実際、その風評によって小学校の保健室から正露丸が消える事態も起きました。

 誤解は払拭しなくてはなりません。そこで論文などでエビデンスを示し、正露丸の主成分である木クレオソートの安全性を証明することに注力しました。研究所でデータを収集し、発ガン性試験を実施。発ガン物質を含む石炭クレオソートと木クレオソートとの混同・誤認を解消することにも努めました。こうして、発ガン性はないというエビデンスを改めて取り直し、風評被害を押さえ込みました。

 有効性も検証しました。緒方先生に実験を繰り返してもらい、正露丸のいろいろなメカニズムを解明しました。例えば、「塩素イオンチャンネルをブロックし、腸管内の水分分泌を抑制し、吸収を促進する」「セロトニンをブロックし、大腸運動を正常化する」といった効能を明らかにしていったのです。木クレオソートの薬効を解明する論文だけで15本以上出しています。

 日本OTC医薬品協会などが編集する「OTC医薬品事典」という本には、止瀉薬に使われる主な成分と働きを記したページがあります。

 昨年まで、木クレオソートに関しては、「腸内の有害細菌に対し、殺菌作用がある」と書かれていました。今、腸内細菌は健康のカギを握る存在として脚光を浴びています。そういう中で「正露丸=殺菌剤=腸内細菌にも殺菌効果がある」という誤った認識が根付いてしまえば、正露丸の未来はありません。

 そこでヒトの臨床試験を行い、木クレオソートが腸内細菌には作用しないことを証明しました。この情報を提供した結果、今年のOTC医薬品事典は、木クレオソートについて「過剰な大腸運動を正常化し、腸管内の水分分泌を抑制、水分吸収を促進する」と記しています。

 今、正露丸は止瀉薬に分類されていますが、本来は水分吸収促進大腸運動整腸薬です。今後、エビデンスに基づき、正露丸のカテゴリーを変え、需要を拡大していくべきだと考えています。その際、正露丸に使用禁忌がないというのは非常に大きなメリットとなります。感染性の下痢の場合、腸の運動を止める下痢止め薬を使うことはできません。正露丸は大腸運動を正常化するものですから、他の止瀉薬と違い制限なく使えます。うまくマーケティングしていけば、世界中でさらに市場開拓できるポテンシャルがあります。