慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネス・スクール)が次世代の経営の担い手を育成すべく、エグゼクティブ向けに開設する「Executive MBA」。9月の経営者討論科目に登壇した斎藤英明アクサダイレクト生命保険代表取締役社長は「企業変革とリーダーシップ」と題した授業を行った。

 授業の後半では受講者との間で質疑応答が繰り広げられた。日系金融機関から数回の転職を経て外資系企業の「プロ経営者」となった斎藤社長自身について、「日本の会社のドロドロした世界にあえて飛び込んで、企業を変革する気はないのか?」などといった、突っ込んだ質問も飛び出した。

(取材・構成:小林佳代)

前回から読む)

<b>斎藤英明(さいとう・ひであき)氏<br>アクサダイレクト生命保険 代表取締役社長</b><br>1963年東京都生まれ。1986年東京大学法学部を卒業後、農林中央金庫に入庫。本店で融資を担当していた1994年に米スタンフォード大学ビジネススクールへ留学、1996年MBAを取得。1998年ボストン・コンサルティング・グループに入社し、後にパートナー&マネージング・ディレクターも務めた。2010年シスコシステムズに移り、常務執行役員、専務執行役員を歴任した。2013年2月アクサダイレクト生命保険(旧ネクスティア生命保険、2013年5月社名変更)の社長に就任。落ち込みが続いていた新契約件数を約2年でV字回復させた。(写真:陶山勉)
斎藤英明(さいとう・ひであき)氏
アクサダイレクト生命保険 代表取締役社長

1963年東京都生まれ。1986年東京大学法学部を卒業後、農林中央金庫に入庫。本店で融資を担当していた1994年に米スタンフォード大学ビジネススクールへ留学、1996年MBAを取得。1998年ボストン・コンサルティング・グループに入社し、後にパートナー&マネージング・ディレクターも務めた。2010年シスコシステムズに移り、常務執行役員、専務執行役員を歴任した。2013年2月アクサダイレクト生命保険(旧ネクスティア生命保険、2013年5月社名変更)の社長に就任。落ち込みが続いていた新契約件数を約2年でV字回復させた。(写真:陶山勉)

受講者:経営者には3つのタイプがあるというお話でした。サラリーマンのトップ、創業者・オーナーはわかります。もう1つのプロフェッショナルの社長というのはどういう存在でしょうか。どういうことをする人が「プロ経営者」といえるのか。ご説明をいただけたらありがたいです。

斎藤:「プロ経営者」という言葉、一時はやりましたね。一般的によくいわれていることは、プロ経営者は「どんな状況でも結果を出す」とか、「どんな状況でも期待に応えられる」ということです。

 もっとも、私は結果を出せるかどうかの半分は運によるものだと思っています。その時のマクロ環境とか巡り合わせがかなり大きい。となると、結局のところ、プロと呼べるかどうかは「意思決定できるかどうか」「決断できるかどうか」が大きく関係するのではないでしょうか。

 意思決定って、みんなとても苦手ですよね。右か左かどっちかを選ぶしかないんだけど、非常に決めにくそうにしている人が多い。

 どちらを選ぶべきかを熟慮した結果、選ぶ根拠が100対0とか90対10の意思決定なら簡単にできますが、そんな状況はなかなかないですね。60対40とか55対45となると決断するのは難しい。10しか差がなくて45を捨てなくてはいけないわけですから、「痛み」を伴います。51対49だったらなおさら痛い。

 こういう時、私は有効数字を1ケタにして考えるようにしています。80対20や、55対45ではなく、8対2、6対4と考える。6の方を取ると決めたら、私はその後、6割の人をどうやって後押しするべきか、4割の人をどうやってケアするべきかと、突き詰めて考えます。そうすると意思決定をするのが楽になります。

 私も意思決定で迷ったり悩んだりすることは当然、ありますよ。人間ですから。けれど、私のように、外資系企業に途中から会社に入っている者は「いつ辞めることになっても、仕方がない」という覚悟がどこかにある。そのせいか、「とにかく決断してしまえ」みたいなところがありますね。これは強みといえるのかもしれません。

次ページ こまめに連絡し「I care you.」を示す