使い捨てカミソリを生んだ発想とは

 ユニークなインサイトを見つけるためには切り口が必要です。いくつか例を挙げれば、既存フレームワークを活用する、バリューチェンを広げる・絞り込む、ホワイトスペース(空白)を探す、時間軸で考える、逆のことを考える、アナロジー(類推)で考える、ユーザーとして経験する…などです。

 例えばアナロジーで考えて生まれた商品の事例がフランスのメーカー、BICの使い捨てカミソリです。かつて、BICは3本1ドルぐらいの使い捨てボールペンを発売しました。それまで高価だったボールペンを安く身近なものとして提供したことで大ヒット商品となりました。では次に続く商品として何を発売するか。ふつうに考えると同じ筆記用具のシャープペンなどに行き着くところです。でもBICはそうはしませんでした。使い捨てボールペンのメカニズムを考え、「使い捨て」と「プラスチック」の構成要素に分解。プラスチックを使って使い捨てのものを作れば売れるだろうと考え、カミソリにしたのです。結果、やはり大ヒット商品となりました。

 ユニークなインサイトを見つける上でスピードは競争力となります。特に金融業界ではスピードこそが重要です。金融の世界で独自の商品を生み出すのは難しいからです。差異化しようとしたらスピードに差をつけるしかない。アクサダイレクト生命は小さくてフラットな組織ですから、スピードだけは大きな会社に絶対負けないつもりでいます。

 様々な経験という意味で私にとって大きかったのはIT業界の外資系企業であるシスコシステムズに勤めたことです。フラットな組織でフリーロケーション。テレワーク(自宅など会社外での勤務)なども経験しました。ダイバーシティのカルチャーにも触れました。IT業界というのはコンペティターであってもプロジェクトによってはパートナーになります。そういう新鮮な経験が、今の私に大きな影響を与えました。

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