信頼に足る現地のリーダーに任せる

 その後、アジア地区を統括することになり、初めて日本以外の国の管理を経験しました。インド、オーストラリア、中国など様々な場所に行きました。最初のうち、勢いあまって、何でも自分でマネージしようとしていました。KPI(重要業績評価指標)をレビューする際も、すごく細かいところにまで口出ししていました。けれど、すべての国を自分で管理できるはずはありません。自ら何度足を運ぼうと、そこに住んでビジネスをやっている人ほどはわからないものです。

 グローバルのトップから、「自分が信頼するヤツを見つけて、そいつに任せろ」と言われました。自分ではわからないことを何度もレポートを出させ、レビューをしても、現地の人間の仕事の邪魔になるばかり。信頼に足る現地のリーダーを見つけ、任せてやらせてみるというのが一番だというのは本当にその通りだと思いました。

 「任せるしかない」とわかると、腹をくくるものです。本来、マネジメントというのはこういうものだとこの時に思い知りました。その後、成長・イノベーション戦略を立案・実行する部門の責任者に就き、それまで経験のなかった管理部門の経験を積みます。そして46歳で社長に就任し、今に至ります。このように様々な部署、役職で様々な経験をしながら、リーダーに必要なことを学ばせてもらうことができました。

 一般に、キャリアの進展、拡張については「キャリア・ラダー(ハシゴ型)」をイメージする人が多いことと思います。同一領域で一本道を昇進していくパターンです。ジョンソン・エンド・ジョンソンの場合はこれとは違って、「キャリア・ラティス(格子型)」です。複数領域で昇進したり、平行移動したりと様々な経験を積みながらキャリアを構築していきます。頻繁に人を動かしますが、全員に対してやみくもに機械的にローテーションをするわけではありません。本人の希望、適性、ポテンシャルなどを見ながら、オーダーメードでやっています。私はキャリア・ラティスで経験を積んだ典型的な社員だったといえます。