
「クレドーリーダー」は社内で最高の褒め言葉
「そうは言っても、クレドーとか経営理念なんて、会社の壁に掛けているただの“お飾り”ではないのか?」
社外の方からはよくそう言われます。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソンは実際にクレドーに沿って色々なことを決め、判断しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドーの中身は、当時こそ、非常に画期的だったと思いますが、現代においてはそれほど変わったことを書いているわけではありません。今は、どこの会社も似たような理念を掲げていると思います。では、なぜジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドーが今でもよく取りあげられるのかというと、それはクレドーに対するこだわりが極めて強いからだと思います。
ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、代々トップのCEO(最高経営責任者)から「我が信条こそが一番大事なもの」と言われ続けています。株式公開から75年たち、現在は7代目がCEOを務めていますが、その間、誰もが「クレドーが重要」と言い続けて今日に至っています。社内ミーティングであれ、社外カンファレンスであれ、CEOが話す機会がある時に、我が信条という言葉を使わないことはまずありません。前CEO(最高経営責任者)のビル・ウェルドンは、「我が信条は単なる理念やフィロソフィーではなく、ビジネスをどう運営したらいいかを書いたドキュメントだ」と言っていました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの中には「クレドーリーダー」という言葉があります。この言葉を使って形容されれば、それは社内において、一番の褒め言葉です。逆に、「あなたはクレドーリーダーじゃないね」と言われた瞬間、ジョンソン・エンド・ジョンソンにおいてのキャリアは終わると感じます。それぐらい真剣に、こだわってクレドーを追求している。それこそが本当のカギだと思います。
クレドーを真剣に追求した成果も出ています。顧客や患者さんに対して、ジョンソン・エンド・ジョンソンはヘルスケアの分野で様々なイノベーションを起こしてきました。古くから我々が研究開発を続け、発明したものがいっぱいあります。蒸気滅菌機械、バンドエイド、デンタルフロス、救急箱、使い捨てコンタクトレンズ…。
この15年ほどの医療機器のイノベーションで、最もインパクトが大きかったのは冠動脈のステントです。狭心症や心筋梗塞で心臓の冠動脈が詰まってしまうことがあります。従来は、風船で膨らませたり、外科手術で胸骨を切ったりして治療をしていました。それを、金属の筒状のものを冠動脈に入れて広げられるようになりました。ステントは心臓手術を回避できる極めて画期的な製品です。高齢で手術は難しいという方の命も救う可能性を秘めている。こうしたイノベーションは今後も極めて大切だと思います。
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