
1988年静岡大学人文学部法学科卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。医療機器の営業、マーケティング、トレーニングを担当。外科用機材部門と糖尿病関連事業部門の事業部長を経て2005年にグループ会社オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社長に就任。2008年同社アジアパシフィック事業も統括。2010年ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカルカンパニー成長戦略担当副社長シニアバイスプレジデントに就任。2012年より現職。(写真は北山宏一、以下同)
慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネス・スクール)は次世代の経営の担い手を育成すべく、エグゼクティブ向けに特化した学位プログラム「Executive MBA(EMBA)」を開設している。「EMBA」プログラムの目玉の1つが、企業経営者らの講演と討論を通して自身のリーダーシップや経営哲学を確立する力を養う「経営者討論科目」。日経ビジネスオンラインではその一部の授業を掲載していく。
6月の経営者討論科目では、ジョンソン・エンド・ジョンソンの日色保代表取締役社長が講義した。ジョンソン・エンド・ジョンソンで有名なのが「我が信条(Our Credo)」。日色社長はクレドーがいかに社員一人ひとりに浸透し、事業運営の中核となっているかについて説明した。
(取材・構成:小林佳代)
今日は「ジョンソン・エンド・ジョンソンにおける人材育成とリーダーシップ」というテーマで話をします。私自身の経歴も含めてほしいということでしたので、そういう内容も盛り込みつつ、進めていきます。
皆さん、ジョンソン・エンド・ジョンソンはよくご存じのことでしょう。綿棒や「ベビーローション」、絆創膏の「バンドエイド」、マウスウォッシュの「リステリン」、コンタクトレンズの「アキュビュー」などを製造・販売しています。
実はこういう一般消費者向けの製品は会社の売り上げのごく一部。売上高比率でいうと18%に過ぎません。日本ではその比率はもっと低く、10%以下です。大きいのはBtoBの製品。医薬品が全体売上高の47%、医療機器が35%を占めています。医薬品分野では世界の5~6位、医療機器分野では、コンタクトレンズを入れると世界で1、2位を争う会社です。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの売上高は8兆円ほど。時価総額は世界の9~10位辺りにいます。時価総額でトップ10に入る企業はアマゾン・ドット・コムやマイクロソフトのようなIT系の企業が中心。132年前に創業した製造業としては、今も高い評価をいただきながら、非常に大きな規模でビジネスをしている会社といえます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンというと、よく知られているのが「我が信条(Our Credo)」です。企業の価値基準を示した、いわゆる企業理念のことです。我が信条ができたのは1943年で、今年で75年になります。
我が信条では以下のように、「全社員が担う四つの責任」を明記しています。
- 我が信条 Our Credo
- 全社員が担う四つの責任
- 顧客・患者さん
- 高品質、適正な価格、注文への迅速な対応、取引先への適正な利益配分
- 社員
- 個人の尊厳と価値、安心で公正な待遇、清潔・安全な職場環境
- 社員の家族に対する配慮、有能な人材の能力開発と平等な昇進機会
- 有能な管理職の任命
- 地域社会
- 良き市民、有益な社会事業、福祉への貢献、租税の負担、環境/資源の保護
- 株主
- 健全な利益を生む事業
- 新しいアイデアへの挑戦、研究や革新的な企画の開発
- 失敗への償いと逆境への備え
我が信条の英文には、「must」という言葉が30回以上出てきます。must、must、must…。mustだらけの文章です。
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